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パワハラを予防するための対策 パワハラが生じた際の対処・証拠の集め方

パワハラを予防するために、会社はどのような対策をすべきでしょうか。

実際にパワハラが生じた際、会社はどのように対処すべきでしょうか。

ここでは、

  • パワハラを予防するための4つの対策方法
  • パワハラが生じた際の対処・証拠の集め方

について解説していきます。

パワハラ予防は企業における社内問題の最重要課題

政府による労働施策総合推進法(別名パワハラ防止法)の改正によって、職場のパワーハラスメント対策が義務付けられることになりました。

この様に日本政府のパワハラ防止に関する活発な取り組みがあげられるため、パワハラ予防は企業における社内問題の最重要課題といっても過言ではございません。

 

パワハラ防止法についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

パワハラ防止法~会社が講ずべき3つの対策について解説~

パワハラを予防するための4つの対策方法

パワハラを予防するためには、会社が積極的に対策を講じ、従業員にも協力していただく必要がございます。

ここでは、パワハラが生じる前に講ずべき、対策方法を解説していきます。

 

1 ルールを決める

会社のルールとして就業規則を作成することはよく知られていますが、就業規則を作成する意味の一つとして、懲戒のルールを定めることがあります。

従業員にとっては「ルールに縛られる」「厳しい処分がなされる」と思われることもありますが、パワハラ行為を行う者に対する懲戒処分をするためには、就業規則による懲戒規程の作成が必須となります。

懲戒規定を設けることで、規定した事案が生じた際に、懲戒処分をすることができるようになります。

パワハラの抑制や、パワハラが生じた際の再発防止にもつながることでしょう。

 

2 周知する

会社のルールを定めた後は、従業員へ周知していただく必要がございます。

就業規則をそのまま周知することも大切ですが、会社内で共有される情報媒体(情報紙やポスター、掲示物等)を通じて、周知・啓発を行うことで、パワハラ防止に向けた意識を会社全体に浸透させることが期待されます。

また、就業規則に委任の根拠規定を設け、これに基づいた「パワハラ防止規定」を設けることも有効と考えられます。

就業規則への規定だけでは、長文であるために、せっかく会社が定めた規定も、従業員が読んでくれないことがございます。

別規程を設けることで、従業員にとってパワハラ防止対策が見やすくなり、会社がパワハラ防止に注力していることも周知することができます。

 

3 実態を把握する

パワハラ防止を効果的に進めるためには、職場内の実態を把握するためのアンケート調査の実施が有効です。

アンケート調査は、パワハラの有無の把握だけでなく、パワハラについて職場で話題にしたり、働きやすい職場環境づくりについて考える貴重な機会にもなります。

また、パワハラの存在が把握できた際には、既にパワハラ行為が長期に渡って継続しているという事例もございます。

パワハラの被害者が言い出せない場合に、第三者からの証言を聞くことで、事態の把握に繋がることもございます。

アンケート調査など、会社側から積極的に調査を行うことで、パワハラの存在を早期に発見することができ、事態が深刻化する前に対策を講じることができます。

個別面談も大切ですが、匿名のアンケート調査を実施することで初めて把握できることもございますので、個別面談と合わせてアンケート調査を活用していただくと効果的です。

 

4 教育する

予防対策として最も効果が大きいと考えられる方法が、研修の実施です。

研修は、従業員にパワハラ対策を能動的に考えていただき、パワハラに関する理解や知識を深めていただく機会となります。

研修を実施する際は、外部講師に委託することが一般的です。

外部講師は、専門知識が豊富であり、分かりやすいように研修の流れを組み立てているため、従業員に関心を持って貰いやすいという利点がございます。

社外のパワハラ事例やパワハラ対策事例をもとに、客観的なアドバイスや指導をして頂けることで、従業員の視野も広がることが期待されます。

特にパワハラの行為者は、自覚がなくパワハラ行為を行っている場合もございますので、気付きを与える意味でも、外部講師による研修は非常に有効です。

また、研修は一度で終わるのではなく、繰り返し、定期的に実施すると効果があるといわれています。研修の継続を通じて、パワハラ防止に対する意識を定着していただくことが大切です。

ここまでで4つのパワハラ予防対策方法を解説いたしました。

すべてを実施することができれば、相乗効果も期待でき、パワハラ予防を含めた職場環境の向上に繋がることは間違いございません。

しかし、いきなり全部を取り入れることが難しければ、1つずつで結構ですので、今すぐにでも実施していただくことをお勧めいたします。

少しでも従業員の意識が変われば、パワハラ予防に効果を発揮することでしょう。

 

パワハラが生じた際の対処

パワハラ予防の対策を講じた場合も、パワハラが生じる可能性はございます。

パワハラが疑われる事案が生じた場合は、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処として、次の措置を講じることが求められます。

 

1 事実関係の迅速かつ正確な確認

行為者、被害者、第三者から事実関係を確認すること。

その際、被害者の心身の状況、当該言動や行為が行われた際の受け止めなど、その認識にも適切に配慮することが大切です。

事実関係の確認方法・調査については、後述させていただきます。

 

2 相談者(被害者)に対する速やかな配慮

事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換等の措置を講ずることが考えられます。

 

3 行為者(加害者)に対する措置

就業規則その他の職場における服務規律等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。

あわせて、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換等の措置を講ずることが考えられます。

パワハラがあった場合の行為者への処分について下記記事で詳しく解説しておりますので、併せてご確認ください。

パワハラがあった場合、行為者へどのような処分をすべき?

(3)パワハラが生じた際の証拠の集め方

次に、事実関係の確認方法・調査ついて解説していきます。

 

1 相談者(被害者)へのヒアリング

まずは、相談者から詳しくヒアリングし、メール・SNS・録音などの証拠や、目撃者の有無を確認していただきます。

ヒアリングの際は、相談者と直接関わらない部署の方などを第三者として同席していただき、相談者と同部署の従業員には悟られないように配慮していただくと、相談者も話しやすくなります。

また、同席していただく第三者が管理監督者など職責が高い方の場合は、高圧的に感じられる方もいらっしゃいますので、バックオフィスの事務員などが推奨されます。

社員の配置などによっても異なりますので、そのときに応じて適任となる方は変わることがございます。

証言は丁寧に聞き取り、不自然な誇張がないか、証拠に一貫性があるか等にも留意しつつ、記録していただく必要がございます。

メールやSNSの記録は、日付や発信者が分かるように画面保存あるいは印刷していただき、物的証拠として残していただきます。

先に行為者にヒアリングを行うと、物的証拠を消去されることも考えられますのでご留意ください。

録音データは、名前を発言していることで誰の発言であるかを明確にさせる必要がございます。

発言内容をよく聞いて、客観的に「誰が・誰に対して・誰のこと」を発言しているか分かるかを確認していただきます。

 

2 行為者(加害者)へのヒアリング

次に、行為者へヒアリングしていただき、相談者の証言と食い違う部分がないか、慎重に事実関係を確認していただきます。

このとき、相談者へのヒアリングと同様に、第三者に同席していただき、詳細に記録していただくことが求められます。

また、行為者へのヒアリングは、さらなるパワハラに繋がることも考えられますので、基本的には相談者の同意のもとで実施していただくことが望ましいとされます。

また、行為者が「誰からの相談か」と聞いてきても、答える必要はございません。

答える行為自体が、相談者にとって不適切な対応として受け取られることも考えられます。

この段階で行為者が事実関係を認める場合は、認めた事実がパワハラに該当するか評価していただきます。

この段階で相談者と行為者の証言が食い違う場合は、目撃者等の第三者へヒアリングしていただきます。

 

3 第三者へのヒアリング

被害者と加害者との直接のやり取りは、当然、証拠となり得ます。

また、被害者と第三者とのやり取りも証拠となり得ますが、加害者が書いたものでない以上、ねつ造の可能性にも注意していただく必要がございます。

裁判所は、過度に具体的であったりする場合、ねつ造の可能性があると考えることがございます。

被害者の立場になってヒアリングするのではなく、あくまでも客観的な視点を以ってヒアリングしていただくことが大切です。

 

4 評価

証拠をもとにパワハラの評価をしていただきます。証拠が不十分な場合は、パワハラと認定されないことがございます。

十分な証拠があり、パワハラに該当する場合は、懲戒処分を検討していただきます。

しかし、ここで重すぎる処分をすると、懲戒権の濫用として無効となりうる点にも注意が必要です。

まずは、行為者への注意・指導から始め、それでもパワハラが継続する場合は、重い処分をしていただくなど、段階を踏んだ対応が適切です。

パワハラの内容に応じて対応も変わってきますので、専門家への相談も有効とされます。

金銭的なコストは必要ですが、早期解決に繋がり、全体と見て金銭的にも得をする場合もございます。

(4)まとめ

ここまで、パワハラを予防するためには、従業員への教育や従業員からの協力が重要であると解説しましたが、まずは会社として変わることが大切です。

形としてルールを作るだけでなく、パワハラを許さないという姿勢を見せること必要です。

また、パワハラがあった場合に迅速に対処できる体制を整えることは、従業員が安心して働くことができる職場環境にも繋がります。

役員、管理職、一般職員に関わらず、パワハラ問題に関心を持ち、積極的なアプローチをすることが、パワハラの予防に繋がることでしょう。

※弊所では、残業代請求を含む労働トラブルについて、会社経営者様からのご相談(会社側のご相談)のみをお受けしております。
利益相反の観点から、従業員・労働者側からのご相談はお受けしておりませんので、予めご了承ください。

 

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