「道路交通法(「道交法」とも呼ばれる)」とは、道路の安全確保、円滑な交通を実現するためのルールが定められている法律のことをいいます。
(目的)この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。
(参照)法令リードhttps://hourei.net/law/335AC0000000105
具体的には、歩行者が通行する方法、自動車が道路を交通する際の方法、自動車の運転手が負うべき義務、自動車等の運転免許に関すること、また違反したときの罰則などが規定されています。
今回は、2024年11月から施行された道路交通法改正について、変更の内容とポイントを解説します。
目次
2024年11月施行 道路交通法改正の概要
今回の道路交通法改正には、自転車等の交通事故を防止することを目的とした各種の新ルールが設けられました。
その背景には、近年自転車の運転中に携帯電話(スマートフォンなど)を使用したことに起因する交通事故の件数が増加傾向にあります。
今回の道路交通法改正の主な目的は、自転車等による交通事故を防止することです。
また、自転車を酒気帯び状態で運転すると、酒気帯びでない状態に比べて死亡重傷事故率が大幅に高まることが分かっています。
自転車運転中の「ながらスマホ」の禁止・罰則化
ながらスマホとは、運転中にスマートフォンやカーナビ、テレビなどに気を取られ、安全運転に必要な注意を怠る行為を指します。
自転車の運転中は、停止している場合を除き、スマートフォンでの通話や画面の注視を伴う「ながらスマホ」は禁止されています。
重大事故の原因となるため社会問題として注目され、近年は、ながら運転に対する罰則が厳しくなっています。
また、自転車に取り付けたスマホの画面を注視することも禁止されています。
違反した場合の罰則内容は以下のとおりです。
自転車における「ながらスマホ」の処罰
運転中にながらスマホをした場合・・・6ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金
運転中のながらスマホにより交通事故などの交通の危険を生じさせた場合・・・1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
これまでは、自転車の危険行為に対する取り締まりは、「自転車指導警告カード(通称:黄色切符)」と、罰金が発生する「違反切符(通称:赤切符)」の2種類のみでしたが、
今回の改正により罰金額が増え、懲役刑も追加されより厳罰対象となりました。
(参照)警視庁HP https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/cycle_kaisei.html
自転車の酒気帯び運転に対する罰則の新設
飲酒して自転車を運転することは禁止されており、これまでは酩酊状態で運転する「酒酔い運転」のみ処罰の対象でしたが、今回の道交法改正により「酒気帯び運転」※1についても罰則の対象となります。
また、自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供したり、自転車を提供したりすること(酒気帯び運転のほう助)も禁止されています。
具体的な内容は以下のとおりです。※1(呼気1リットル中のアルコール濃度0.15ミリグラム以上)
- 酒気を帯びて自転車を運転すること。
- 自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供すること。
- 自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供すること。
- 自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗すること。
運転者に対する処罰
[罰則]酒酔い運転・・・ 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
酒気帯び運転 ・・・ 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
運転者以外の周囲の責任についての処罰
[車両提供者は運転者と同じ処罰に!!]運転者が酒酔い運転・・・5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
運転者が酒気帯び運転・・・3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
[酒類の提供・車両の同乗者]運転者が酒酔い運転・・・3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
運転者が酒気帯び運転 ・・・2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
(参照)警視庁HP https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/torishimari/inshu_info/inshu_bassoku.html
原動機付自転車等の「運転」の明確化
ペダル付き原動機付自転車(いわゆるペダル付き電動バイク)とは、ペダルを漕がなくても電動で自走する機能を備え、電動のみ、又は人力のみによる運転が可能な電動バイクで、特定小型原動機付自転車に該当しないものをいいます。
その背景には、ペダル付き原動機付自転車に関連する交通事故は近年増加傾向にあり、一般原動機付自転車等に該当するにもかかわらず、インターネット等を通じて「電動アシスト自 転車」といった不適切な表記で販売されており、違反取締りに際して、「自転車だと思っていた」 旨供述するものを多く問題視されていました。
今回の改正により、ペダル付き電動バイクを、原動機を用いずペダルその他の装置を用いて走行させる場合でも、一般原動機付自転車または自動車としての交通ルールが適用されるこが明確化さるようになりました。
また、原動機付自転車の運転の定義に、「ペダルその他の人の力により走行させることができる装置を用いて走行させる場合」が含まれることが明確化されました。
公道を走行するために必要なこと
- 一般原動機付自転車等を運転することができる運転免許を受けていることおよび免許証を携帯すること
- ブレーキランプ、ウインカーなど道路運送車両法の保安基準に適合した装置を備えていること
- ヘルメットを着用すること
- ナンバープレートの取り付けおよび表示すること
- 自動車損害賠償責任保険(共済)に加入していること
(参照)警視庁公開資料newmobility0803.pdf
最後に
企業においても、通勤や業務中の移動の際に従業員が自転車を用いるケースがあるかと思います。
従業員が自転車の交通違反を犯して取り締まられた場合、警察に呼び止められて業務が滞ってしまうおそれがあるほか、酒気帯び運転では車両等を提供した者・酒類を提供した者・飲酒をすすめた者にも罰則が適用されます。
また、取り締まりの事実が大々的に報道されると、企業としての社会的評価が損なわれてしまう恐れもあります。
そうならないためにも、今回の道路交通法の改正を契機に、改めて従業員に注意喚起(通勤や業務中の移動に自転車を利用している従業員に対して声掛け、酒気帯び運転についての従業員教育を今一度行う)などの対応を行うことが望ましいです。
従業員が、通勤中や業務中に自転車で事故を起こしたような場合には、会社も使用者責任を問われる可能性があります。
今回の改正をふまえ従業員への教育等の見直しなど人事・労務に関するお困りごとがありましたら是非お気軽に社会保険労務士法人ベスト・パートナーズにご相談くださいませ。