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【人事担当者様向け】年次有給休暇取得時の賃金の計算方法について解説!

年次有給休暇は、一定の条件を満たす従業員に付与される休暇です。その名の通り「有給」の休暇なので、給与がもちろん支払われます。

この記事では、その年次有給休暇を取った日1日分の給与額は一体いくらになるのかについて解説したいと思います。

 

年次有給休暇の賃金の計算方法

年次有給休暇の取得した日に支給する賃金の計算方法は、次の3つの方法があります。

 

  1. 通常の賃金を支払う方法
  2. 平均賃金を支払う方法
  3. 健康保険法の標準報酬日額に相当する額を支払う方法

 

この三種類の計算方法の中から、どの計算方法を採用するのかを就業規則に記載しなくてはなりません。

年次有給休暇の日の給料は、就業規則の絶対必要な記載事項としての「賃金」なので、いずれの方法を選択しても就業規則に規定しておく必要があります。

 

今回のテーマとずれてしまいますが、➀の方法を採用したときの就業規則の記載例を書いてみました。

【就業規則の記載例】

年次有給休暇を取得した日の賃金は、通常の賃金を支払うものとし、その日は所定労働時間の労働をしたものとして取り扱う。

 

では実際の計算方法を順番に見ていきましょう。

 

➀通常の賃金を支払う方法

実際の給与計算上では、➀の通常の賃金を支払う方法を選ぶことが多いのではないでしょうか。

➀の通常の賃金を支払う方法の場合、次のアからウの方法で計算した賃金額になります。

 

ア 月給制の場合は、その月額をその月の所定労働日数で割った金額

イ 日給制の場合は、その日額

ウ 時給制の場合は、その金額にその日の所定労働時間を掛けた金額

 

アの月給制の場合は、通常の出勤をしたものとして取り扱えばよいので、たとえば月給制で30万円の支給をする従業員には、年次有給休暇を取得して休んだ日があったとしても、その月の給与は30万円のままになります。

月給にさらに年次有給休暇分の手当を加算して支払わなければならないわけではありません。

月給制だと年次有給休暇を取得しても給与額に変動がないので、あらためて1日分の計算をしようとすると若干戸惑うのはこのためなのです。

会社側は年次有給休暇の取得日数に関係なく、通常の給与計算ができるので事務処理の手間がかからないのがメリットと言えます。

 

イの日給制は、会社と従業員本人との間で結んだ雇用契約によって定めた日給分をそのまま支給することになります。

 

ウの時給制のパートやアルバイト従業員の場合は、その従業員の時給額に年次有給休暇を取得した日の所定労働時間を掛けた金額が、年次有給休暇を取得した当日分の給与になります。

 

時給額 × 所定労働時間

 

時給制では、働いていない分の給与は支払わないノーワーク・ノーペイの原則で給与計算をおこなうため、年次有給休暇の取得の有無で給与額の変動が大きくなります。

なお、年次有給休暇の取得日の計算に使う「所定労働時間」は、日給制の従業員と同様に、会社と従業員本人との間で結んだ雇用契約によって定めた時間です。

 

その月にパート・アルバイト従業員が勤務した時間と、年次有給休暇を取得した時間を計上して給与計算をすることになるので、給与計算担当者の手間が増え、計算ミスも起こりやすくなります。

 

会社が働き手を求めるときに柔軟な対応ができるので、多くのパート・アルバイト従業員を抱えていらっしゃる企業も多いと思います。

年次有給休暇の取得の扱いや給与計算でミスをしてしまったりすると、会社とパート・アルバイト従業員の間の信頼関係を損なってしまう恐れもありますので、より注意が必要です

 

②平均賃金を支払う方法

②の平均賃金を支払う方法は、次の計算式で賃金を算出します。

 

直近の3ケ月間で支払った賃金総額 ÷ 暦日数(休日も含む)

 

4月に年次有給休暇を取得する場合は、1月から3月の3か月間の給与額をもとに計算します。

 

【例】

3か月間の給与額が90万円、暦日数は90日

 

90万円 ÷ 90日 =1万円 となり、1日あたり1万円を支給します。

 

暦日数で土日祝日を計算に含めることになるので、通常の賃金を支払う方法よりも従業員に支払う賃金が少なくなることがあります。

 

平均賃金の計算に手間がかかりますが、会社は支払う金額を抑えられます。

その反面、従業員にとっては給与額が少なくなり、モチベーションが下がってしまいかねないリスクがあります。

 

原則として、先にご説明しました計算方法を用いるのですが、労働日数が通常よりも少ない場合は、上記の計算ともうひとつ計算式があります。

 

【例】

3か月間の給与額が30万円、20万円、20万円 暦日数は90日 勤務日数は45日

 

70万円 ÷ 90日 =7778円

70万円 ÷ 45日 ×60% =9334円 となります。この場合は9334円が年次有給休暇を取得した日の賃金になります。

 

③健康保険法の標準報酬日額に相当する額を支払う方法

③の健康保険法の標準報酬日額に相当する額を支払う方法を用いる場合は、会社が健康保険に加入しているなら標準報酬月額を把握しているので、計算自体は簡単です。

標準報酬月額は健康保険の保険料を計算するときに、計算しやすいようにするおよその月給のようなものです。

標準報酬月額 ÷30日 で標準報酬日額が計算できます。

 

ただ、標準報酬月額は58,000円から1,390,000円の50等級にわけられていて、通常の賃金を支給する方法や平均賃金を支給する方法よりも、年次有給休暇を取得した日の給与額が減ることも考えられます。

そのため、標準報酬日額を用いて支給するときは、労使協定の締結が必要です。

 

基本給のほかに出来高払い制や、その他請負制を導入されている会社も多いと思います。

通常の賃金を支払う方法が多くの会社で導入されている計算方法ですが、この方法で支払う場合における歩合給の総額を、賃金支払期間における総労働時間で割った金額に、その賃金算定期間における1日の平均所定労働時間数を掛けた金額を通常の賃金に加えることになります。

文章で書くと訳がわからなくなりますので、具体例を見ていきましょう。

 

【例】

1日8時間が所定労働時間、その月の所定労働時間168時間、残業時間25時間、歩合給は10万円

 

100,000円 ÷ (168時間 + 25時間)× 8時間 =4,146円

 

この場合、基本給等から求めた通常の賃金に4,146円を加算した額が年次有給休暇を取得した日の賃金になります。

 

これまで見てきたのは在職時の年次有給休暇を取得した場合の計算方法になります。

本来、年次有給休暇は給与が減ることなく従業員が休息を取れるようにする休みのため、買取の扱いをすることは認められていません。

労働基準法で定められた以上の有給休暇を与えている場合や、2年の有効期限が切れて消滅する年次有給休暇の買取は例外的に認められています。

 

しかし、退職した後は年次有給休暇を取得する権利自体がなくなってしまうため、退職するときに限って、年次有給休暇の買い取りをおこなっている会社もあります。

退職するときの有給休暇の処理については法律で定められているわけではないため、精算するかどうかは会社の判断になります。

もしも買い取りをするのであれば、年次有給休暇を在職時に通常通りに取得した際の計算と同じ方法を用いるのが望ましいでしょう。

 

まとめ

有給休暇がなかなか取得できない、取れるような職場の空気ではない、取りたいと言っても取らせてもらえない、というお話を耳にすることがあります。

年次有給休暇は労働者の権利なので、取得させないと労働基準法違反になってしまいます。

また、年次有給休暇を取得したのに欠勤扱いになってしまい、賃金が支給されないという場合も当然、労働基準法違反です。

 

従業員ごとに年次有給休暇を取得した状況を確認して給与計算を毎月行っていくのは、本当に手間のかかる作業です。

年次有給休暇の給与計算を正確にミスなく行うためには、自社で採用している計算方法を理解する必要があります。

また、従業員ごとの取得日数や残日数の算出を自動でおこなう勤怠システムを導入することも効率化の一翼を担うでしょう。

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