就業規則は、一度作成すればずっと同じものを使い続ければ良い。というものではありません。
法改正への対応はもちろん、時代や環境の変化に合わせて定期的に見直す必要があります。
就業規則は会社のルールとなるものです。
トラブルが発生した際などにも就業規則に則って対応をしていくことになります。
厚生労働省が出している就業規則のひな型や親会社の就業規則をそのまま利用したり、古い就業規則のまま何年も改定していないとなると、会社の実状に合わない内容になっている可能性があるため、思わぬトラブルを招く可能性があります。
目次
どんなときに就業規則の変更が必要か
どのような場合に就業規則を変更するのかそれぞれ解説します。
新たに会社のルールを定めた、すでにあったルールを変更するとき
就業規則はいわゆる会社のルールを定めておくものです。
新たにルールができたとき、すでにあるルールに変更があった場合には、就業規則を変更しましょう。
(例)
- 新しくテレワーク手当を支給することになったとき。
- フレックスタイム制を導入することとなったとき。
- 休日が今までは土日だけだったが、祝日も休日にすることになったとき。
- 有給休暇の時間単位付与の制度の導入することとなったとき。
法改正への対応
最近の法改正の例
- 2022年4月~ パワーハラスメント防止措置の全企業への義務化
- 2022年1月~ 育児・介護休業法の改正(産後パパ育休の新設)
- 2020年4月~ 同一労働、同一賃金(中小企業は2021年4月~)
- 2019年4月~ 年次有給休暇の年5日間の取得義務
上記ご覧いただくと、いかに会社と労働者に関する法律が日々変わってきているのかお分かりいただけるかと思います。
例えば、有給休暇の年5日の取得義務について、なかなか従業員が有給を使用してくれないので、会社で有給を使用してもらう日を指定したい。という場合、これはいわゆる「年次有給休暇の計画的付与」というものですが、これを行うにはあらかじめ就業規則に計画的付与の制度がある旨を記載して周知おく必要があります。
但し、法改正があったからと全ての内容を記載しなければならないかというとそうではありません。
まず、すでに法律を上回った従業員に有利な内容になっている場合、わざわざ法律に合わせて条件を下げる必要はありません。
また、法律には使用者に義務を課しているものと努力義務を課しているものがあります。
努力義務のものも全て就業規則に取り入れて、それに合わせて運用ができる体力がある企業であればもちろん良いのですが、ほとんどの中小企業ではそれをしてしまうと、会社自らが作ったルールに会社自らが追い込まれてしまうこととなります。
このあたりも見極めて慎重に変更を行う必要があります。
時代の変化への対応
一昔前は、新卒から定年退職まで長期雇用が当然と考えた就業規則が主流でした。
よくある例が、休職期間の設定が、長期雇用を前提としたものが多く、特に大企業などですと、休職期間が2年、3年となっているものや、さらに給与を保障しているという制度も多く存在しました。
このような就業規則を中小企業が昔親会社から譲り受けた内容のまま使用していると、病気休職等した従業員がいる場合、就業規則に記載されている通り休職を3年間認め、さらにはその間働いてもらえないのに給与を支給しなければならないという事態に陥る可能性があります。
自社の企業体力に応じた就業規則にすることが必要となります。
近年ではコロナウィルスの影響等もあり、テレワークを認める会社も増えてきました。
このテレワークについても、会社でルールを定めておかなければ様々なトラブルの原因となる可能性があります。
例えば、始業・終業時の連絡方法、業務の進捗報告の方法、自宅でのインターネット環境との準備にかかる費用の負担、緊急時の対応等のルールを決めて、規定通りの業務報告を行わない従業員等へはテレワークを適用しない等、トラブルを防止するため、これらのルールをテレワーク規程などとして定める必要があります。
トラブルへの対応
問題社員等の対応で、懲戒処分を行いたいとなった際に、懲戒処分をする対象の事由と処分の程度について、就業規則で定めている範囲でしか行うことができません。
ですので、あらかじめ懲戒処分の内容を就業規則に定めておく必要があります。
トラブルが起こってから、その内容に関する懲戒規程を追記してもそのトラブルに対しては適用することができません。(従業員に有利な場合を除き、遡って変更後の就業規則を適用することはできません。)
ですので、その時代に合ったトラブルを想定して、実際にトラブルが起こる前に就業規則に規程しておくことが重要となります。
特に近年ではSNSでのトラブルも多く、会社の秘密を漏らすような投稿や、顧客に関する情報を投稿するなどした場合に懲戒処分の対象となる旨を規定しておくことで、そのようなトラブルを事前に予防することにもつながります。
就業規則の変更の手順
続いて、就業規則の変更をする場合の手順をステップごとに解説します。
STEP1:変更箇所を決めて改定案を考案する
まずは就業規則のどこを変更するのかを決定します。
変更箇所が決まったら、改正案を考案します。
正社員以外の雇用形態(パート・アルバイト等)も雇用している場合は、正社員以外の雇用形態にも適用されるのか等の変更の適用範囲についても定めます。
STEP2:就業規則変更届の作成
続いて、就業規則変更届を作成します。
就業規則変更届は労働基準監督署に提出します。
特にフォーマットの指定等はございませんが、下記厚生労働省のHPの主要様式ダウンロードコーナーに就業規則変更届の参考様式がダウンロードできますのでそちらを参考にすると良いでしょう。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html
就業規則変更届の作成方法については別の記事で詳しく解説しております。
より詳しく知りたい方は下記リンクよりご参照ください。
STEP3:変更届に添付する意見書の作成
就業規則を変更する場合は、就業規則変更届に加えて改定案について労働者代表から意見を聞いたという証明になる意見書が必要です。
労働者代表は、過半数の従業員が加入する労働組合がある場合は労働組合の代表、労働組合がない場合は従業員の過半数が支持する人が代表者となります。
こちらの意見書に関しても、就業規則変更届と同様に厚生労働省のHPの主要様式ダウンロードコーナーで参考様式をダウンロードが可能です。
STEP4:労働基準監督署へ届出
就業規則変更届、意見書、新しい就業規則が用意出来たら、所轄の労働基準監督署へ遅延なく提出しましょう。
明確な提出期限はありませんが、就業規則を改定した日から1ヶ月以内に提出するのが望ましいです。
STEP5:社内への周知
変更した就業規則は従業員に周知を行うことが義務付けられています。
周知の仕方は、従業員全員がいつでも閲覧できる場所に掲示するほか、書面で従業員に交付する方法もございます。
変更した箇所がわかりやすいように、新旧の就業規則を比較できる表を添付しておくと親切です。
就業規則を変更する場合の注意点
続いて、就業規則を変更する場合の注意点についていくつかご紹介します。
注意点①原則、就業規則の変更は企業単位ではなく事業所単位である
本社と実店舗複数店を経営している場合は、原則、本社と各店舗で個別に就業規則を提出する必要があります。
但し、本社と各店舗の就業規則が全く同じ内容の場合は本社の所轄の労働基準監督署を経由することにより一括して届出することも可能です。
注意点②就業規則を変更した後は、従業員に必ず周知する
労働基準法第106条によって、就業規則を変更した場合は従業員にその旨を周知させることが義務付けられているため、必ず何らかの方法で変更内容を周知させましょう。
従業員に周知されなければ届出を行っていても無効となります。
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毎年のように行われる法改正、会社様で確認いただいたうえで修正を行うのは時間と手間がかかるかと思います。
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