フリーランス新法について解説!

フリーランス新法とは

特定受託事業者に係る取引の適正化に関する法律(=フリーランス新法)は、第211通常国会で成立し、2023年5月12日交付されました。2024.11.1施行

同法は、個人(一人親方含む)やいわゆる『一人会社』で業務委託を受けるフリーランスを特定受託事業者として位置づけ、フリーランスに業務委託する委託者(発注者)に対し下請法(下請代金支払遅延等防止法)と同様の規制を課すほか限定的に労働者類似の保護を与え、これらの違反に広く行政の指導を可能とする法律です。

(B to Bにおける委託取引が対象)

フリーランス新法の内容

Ⅰ下請法と同様の規制

①契約条件明示義務

フリーランスに業務委託をした場合は、直ちに、契約条件を書面や電磁的方法で明示する義務を負います。

[明示しなければならない事項]

  • 業務委託事業者及び特定受託事業者の商号、名称等
  • 業務委託をした日
  • 特定受託事業者の給付・役務を受領する期日
  • 特定受託事業者の給付を受領する場所
  • 給付・役務の内容を検査をする場合は、検査完了期日
  • 報酬をデジタル払い(報酬の資金移動業者の口座への支払)をする 場合に必要な事項

 

②60日・30日以内の報酬支払

フリーランスに業務委託をした場合は、給付受領日・役務提供日から起算して60日以内に報酬を支払う義務があります。

また、フリーランスに業務を再委託する場合(再委託であることや元委託支払い期日などの一定の情報をフリーランスに明示したときは、元委託支払い期日から起算して30日以内にフリーランスに対し報酬を支払う義務があります。

 

③報酬減額、買いたたき等の禁止

フリーランスに継続的業務委託をした場合は、次の報酬減額、買いたたき等の行為が禁止されます。

  1. フリーランスの帰責事由のない給付受領拒絶(役務提供以外)…発注取消納期延期など
  2. フリーランスの帰責事由のない報酬減額…協賛金徴収など名目、金額、方法に関わらず禁止。予め合意があってもフリーランスの責めに帰すべき事由がない場合は違反となります。
  3. フリーランスの帰責事由のない返品(役務提供以外)
  4. 通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること(買いたたき)…通常支払われる対価とは、同種又は類似品等の市価のことです。具体的には「対価の決定方法」「差別的であるかなど対価の決定内容」「同種または類似品等の市価との乖離状況」「給付に必要な原材料等の価格動向」です。
  5. 正当な理由なき物・役務の強制…物には「製品、原材料等」が、役務には「保険、リース等」が含まれます。
  6. フリーランスに経済上の利益を提供させ、その利益を不当に害すること…報酬の支払いとは独立して行われる協賛金などの要請が含まれます。「フリーランスの直接の利益にならない場合」「フリーランスの利益との関係を明確にしないで提供させる場合」など
  7. フリーランスの帰責事由なく給付内容を変更し又はやり直させ、その利益を不当に害すること…「発注の取り消し」「受領した後にやり直しや追加作業を行わせる」等の場合に、「フリーランスが作業に当たって負担する費用を発注事業者が負担しないこと」をいいます。また、フリーランスが作業に当たって負担する費用を負担せずに、一方的に発注を取り消すことも含まれます。

Ⅱ下請法と同様の規制

①契約解除

不更新の30日前予告義務・・・発注者(業務委託事業者)は、フリーランスとの「継続的業務委託」を解除をしたり、不更新とする場合は、原則として少なくとも30日前までに予告しなければなりません。

 

②契約解除理由の開示

フリーランスが、契約解除等の予告がされた日から契約が満了する日までの間において、契約の解除理由を発注者(特定業務委託事業者)に請求した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なくこれを開示しなければなりません。

 

③妊娠、出産、育児介護への配慮義務

特定業務委託事業者は、フリーランスから申し出があれば、その妊娠、出産、育児介護と両立して業務に従事できるよう、「育児介護等の状況に応じた必要な配慮」が求められます。

 

④募集情報の的確表示義務

特定業務委託事業者が広告等でフリーランスの募集情報を提供するとき

は、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、また正確かつ最新の内容に保つ義務があります。

 

⑤安全衛生法の一部適用へ

フリーランスに「休業4日以上の私傷病災害」が発生した場合は、特定業務委託者や現場を管理する企業などに労働基準監督署への報告の義務付け(ガイドラインの策定等も検討)

  • フリーランスが持ち込む機会などへの定期的な安全点検
  • 安全衛生に関する講習・教育
  • 国が年1回の健康診断、定期的なストレスチェックを促す など

 

⑥発注者(特定業務委託事業者)によるハラスメントに関し講ずべき措置

特定業務委託事業者は、フリーランスに対し、当該業務委託に関して行われるセクハラ、マタハラ、パワハラに関する言動により、就業環境を害する等の状況に至ることのないよう、その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他必要な措置を講じなければなりません。

(労働関係諸法令と同様に)これらのハラスメントに関し①方針の明確化とその周知 ・啓発、②相談・苦情に応じ適切に対応するための体制整備、③相談への迅速・適切な対応、防止措置、④プライバシー保護、不利益変更取扱い禁止等の措置が求められます。

特定業務委託事業者は、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったこと又は当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、業務委託に係る契約の解除その他の不利益な取り扱いをしてはなりません。

 

★対象となるハラスメント
  1. セクシャルハラスメント・・・性的な言動に対する特定受託業務従事者(フリーランス)の対応によりその者に係る業務委託条件について不利益を与えること(※対価型・環境型)
  2. マタニティハラスメント・・・フリーランスの妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害すること(状態への嫌がらせ)
  3. パワーハラスメント・・・取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものによりフリーランスの就業環境を害すること(3要素すべてを満たすことが必要。①優越的関係を背景とした言動、②必要かつ相当な範囲を超えた言動、③就業環境を害するもの)

 

※対価型セクハラ:性的な言動を拒否したことで不利益を与えること

環境型セクハラ:性的な言動により就業上見過ごすことができない程度の支障が生じること

偽装フリーランスとは

業務委託形式で働くフリーランスであっても実態が「労働者」であれば、「労働者」として労働法規(労働基準法、最低賃金法、安全衛生法、労働者派遣法、育児介護休業法など)の適用を受け、業務委託者に民事上、行政上および刑事上の責任を生じさせることになります。

(民事上の責任)…割増賃金の負担、労災での安全配慮義務違反に基づく損害賠償義務

(行政上の責任)…労働基準監督署、労働局、職業安定局などの行政当局からの行政指導、是正勧告等。

悪質なケースでは公表

(刑事上の責任)…罰金刑、両罰規定による法人自体への刑事責任

 

労働者性とは

「労働基準法の『労働者』の判断基準について」

Ⅰ 指揮監督下の労働(3つの判断要素と1つの補強的判断要素)

①仕事の依頼や業務指示などに対する諾否の自由があるか

②業務遂行上の指揮監督があるか(具体的指示を受けているか)

③勤務時間、勤務場所の拘束性があるか

上記①②③が肯定される場合は「労働者性」が高まり、否定される場合は「労働者性」が低くなります。

上記②の補強的判断要素として、

④労務提供の代替性があるか も考慮されます。

※その他補強的判断される要素として(考慮ウエイトは低いですが)

⑤事業者性(機械、材料をどちらが負担するか、など)

⑥専属性(他社の業務が制約されているか)

⑦源泉徴収、社会保険料負担の有無

などがあります。

 

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