ストレスチェック制度が施行されてから約10年が経とうとしています。
改めて、制度の概要や目的を確認していきましょう。
そもそもストレスチェックとは
「ストレスチェック」とは、ストレスに関する質問票に労働者が記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状況にあるのかを調べる簡単な検査です。
この検査結果は、検査を実施した医師・保健師等から直接本人に通知されます。
本人の同意なく事業者に提供することは禁止されています。
ストレスチェック制度の目的は?
- 労働者のストレスの程度を把握すること
- 労働者自身のストレスの気付きを促すこと
- 職場環境改善に繋げ、働きやすい職場づくりを進めること
によって、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止する一次予防を主な目的としております。
実際に「ストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業」において集計したアンケート調査では、ストレスチェック制度の効果として「自身のストレスを意識するようになった」と回答した労働者が半数以上に上りました。(グラフ①)
さらに、事業者は「社員のセルフケアへの関心度の高まり」や「メンタルヘルスに理解のある職場風土の醸成」を効果として感じています。(グラフ②)
(ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて 令和4年3月 厚生労働省)
従業員のストレスを把握することで、リスクを排除し、従業員のメンタルヘルスを健全に保つことは1つの課題となります。
従業員のストレスに起因するメンタル不調は生産性やモチベーションの低下に繋がり、さらに休職に至った場合、人的コストは非常に大きいからです。
とりあえず実施するという姿勢ではなく、制度化された目的をしっかりと理解して実施していただけると良いかと思います。
ストレスチェックの義務化(50人未満の事業場の場合)
ストレスチェックは2015年12月1日に施行されました。
義務化対象となる事業場は、「常時50人以上の労働者を使用する事業場」となります。
この場合の「労働者」には、パートタイム労働者や派遣先の労働者も含みます。
常時50人未満の労働者を使用する事業場については、当分の間、努力義務とされています。
個々の労働者がストレスチェックの実施義務の対象となるか否かの判断については、下記をご参照ください。
①期間の定めのない労働契約により使用される者であること
これには、
ア.期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が
1年以上である者
イ.契約更新により1年以上使用されることが予定されている者
ウ.1年以上引き続き使用されている者
を含みます
②その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること
(1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である労働者であっても上記①の要件を満たし、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の所定労働時間数の概ね2分の1以上である者に対してもストレスチェックを実施することが望ましいとされています)
上記①、②に該当していれば、外国人労働者(在留資格は問わない)や退職予定の労働者(実施時期に在籍している場合)であってもストレスチェックの対象者となります。
逆に、契約期間や所定労働時間を満たしていても、ストレスチェックの実施義務対象外となる労働者もいます。
- 休職者
病気療養や産休、育休などによって休職している労働者は対象外となります。
- 派遣社員
派遣元での実施義務があるので、対象外となります。
※集団分析を行う場合は、職場ごとで実施することが望ましいので、派遣社員も含めて分析すると良いでしょう。
- 海外の現地法人に雇用されている労働者
日本の法律が適用されないため、ストレスチェック対象外となります。
※海外に長期出張している労働者に関しては、対象となります。
- 役員
役員は労働者ではなく、使用者に該当するため、ストレスチェックを実施しなくても問題ないとされています。
※役員も含めてストレスチェックを実施すると、企業全体の労働環境を分析し、職場環境の改善に繋げやすくなるので、実施することが望ましいでしょう。
また、労働関係の実態により、対象となるか否かの判断を行わなければならない労働者もいます。
- 出向者
ストレスチェックは、出向者と労働契約関係のある事業者が行います。
そのため、指揮命令権や賃金の支払いなどから総合的に判断し、出向元・出向先のどちらのストレスチェックの対象とするかを決定する必要があります。
前述の通り、ストレスチェックは常時使用する労働者数が50人未満の事業場は義務ではありません。努力義務となります。
ただし、ストレスチェック制度は労働者のストレスへの気付きを促す等の重要な効果があることを考慮し、導入を検討いただくことが望まれます。
ストレスチェックと就業規則
ストレスチェック制度ですが、就業規則に記載する法令上の義務はありません。
しかし、ストレスチェックを受けた従業員が高ストレス者と判断され、本人の申し出により産業医などの医師による面接指導を行った結果、就業上の措置を講じる必要があると判断されれば、事業者は業務内容や労働時間を見直す必要があります。
その場合を考慮し、就業規則に規定しておくことが望ましいでしょう。
厚生労働省の「モデル就業規則」においてもストレスチェックに関する項目が記載されています。
社内規定を作成する際は参考にするとよいでしょう。
(ストレスチェック)
第61条 労働者に対しては、毎年1回、定期に、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を行う。
2 前項のストレスチェックの結果、ストレスが高く、面接指導が必要であると、医師、保健師等が認めた労働者に対し、その者の申出により、医師による面接指導を行う。
3 前項の面接指導の結果必要と認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等、必要な措置を命ずることがある。
令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課 モデル就業規則より抜粋
厚生労働省のストレスチェック実施プログラム
ストレスチェックの未実施事業場(義務化の対象ではない会社)は、下記より厚生労働省「ストレスチェック実施プログラム」を利用してはいかがでしょうか。
会社の規模を問わず無料で利用でき、従業員のストレスチェックのほか、結果の集計・分析、労働基準監督署への報告書も作成できます。
サイト:https://stresscheck.mhlw.go.jp/
ストレスチェックを実施する上で何かご不明点がございましたら、お気軽に社会保険労務士法人ベスト・パートナーズにお声がけいただければ幸いです。