【企業が知っておきたい】社会保険は何歳まで?

寒さが過ぎ、花粉・黄砂も落ち着いたと思ったらもうすぐ梅雨がやってきますね。

じめじめとした季節になり好きな時期ではありませんが楽しみながら過ごしたいとおもいます。

 

さて、今回は「(企業がしっておきたい)社会保険は何歳まで?」についてお話したいと思います。

社会保険は3つの保険で構成されております。健康保険、介護保険、厚生年金保険となります。

それぞれの保険について見ていきましょう。

※今回は社会保険制度についての説明となります。

健康保険

日本は皆保険制度となり、出生~死亡まで何かしらの健康保険制度に加入することになります。

75歳に到達した以降は後期高齢者医療制度の適用となるため、健康保険には加入することができなくなります。

よって健康保険は75歳までとなり、以降は後期高齢者医療制度の適用となります。ちなみに後期高齢者医療制度の加入日は75歳の誕生日当日となります。

 

被扶養者についてはどうでしょうか。被保険者が75歳に到達し後期高齢者医療制度の適用となると、被扶養者の資格は完全に喪失となり、ご自身で国民健康保険に加入するか別の方の扶養家族として健保組合へ加入するかの手続きが必要となります。

また被扶養者の方が75歳以上になった場合も後期高齢者医療制度の対象となりますので、健康保険の扶養は継続できません。

 

次に、保険料について見ていきましょう。

健康保険料は取得日の属する月より発生し、喪失日(退職日の翌日)の属する月の前月までとなります。

給与より控除される時期は当月徴収(4月保険料を4月支給給与より控除する場合)か、翌月徴収(4月保険料を5月支給給与より控除する場合)か会社により異なります。

では、同じ月内で入社と退職が行われた場合はどうなるでしょうか。

この場合、その月分の保険料は発生します。

こちらを同月得喪といいます。

本来であれば喪失日の属する月の前月までが保険料の発生となりますが、同月得喪の場合はその月分まで発生しますので注意しましょう!

 

介護保険

介護保険は40歳に到達した月より保険料が発生します。

また、介護保険料は終身払いとなるため、亡くなるまで支払続ける必要があります。(支払義務の免除は原則ありません。)

では、給与より控除するのは何歳までになるのでしょうか。

65歳以降は本人納付となり、市区町村から送られてくる納付書での支払いか、年金から徴収される特別徴収での支払となります。

よって社会保険での介護保険加入は65歳までとなります。

 

扶養家族がいる場合はどうなるでしょうか。介護保険料も含めて具体的に見ていきましょう。

被保険者が38歳、被扶養者が60歳の場合

本来、介護保険料は被保険者のみに発生し被扶養者の保険料は徴収しないことになっています。

ですが、健保組合によっては例外もあります。

被保険者が40歳未満の場合で、被扶養者が40歳以上65歳未満の場合に被保険者より介護保険料を徴収できる特例制度があります。

これを「特定被保険者制度」といいます。

特定被保険者制度は採用している組合と採用していない組合があり、加入している健康保険により異なりますので是非、自社が加入する組合の制度を再確認するようにしましょう!(全国健康保険協会は対象とされていません。)

被保険者が42歳、被扶養者が40歳の場合

前述でも記載しましたとおり、介護保険料は被保険者の介護保険料に被扶養者の介護保険料も含まれていると考えるため被扶養者の介護保険料は発生せず、被保険者の介護保険料のみ発生します。

被保険者が65歳、被扶養者が60歳の場合

65歳以降の介護保険料は個人納付となりますので給与より控除されることはありません。

また、被保険者が65歳になったとしても被扶養者の立場に変更がありませんので、今まで通り個別に保険料を納める必要はありません。

※特定被保険者制度を採用している組合に加入している場合は保険料が発生します。

被保険者が65歳、被扶養者が65歳の場合

65歳以降の介護保険料は個人納付になることは前述でもお伝えさせて頂きましたので、被保険者の介護保険料は個人納付に変更となります。

では被扶養者の介護保険料についても今まで通り、被扶養者の立場に変更はないので発生しません。と、お伝えしたいのですが被扶養者が65歳になった以降は、今までと違い被扶養者の方にも介護保険料が発生します。

給与天引きする保険料は無くなりますが、それぞれに発生することになりますので該当の時期となった場合は会社より伝えてあげると従業員も心の準備ができるかのしれませんね。

 

厚生年金保険

厚生年金保険は20歳からと思われている方がいらっしゃるかもしれませんが、実は下限年齢はありません。

ですが、15歳以下について就労制限がありますので実質は16歳以上となります。

よって20歳未満であったとしても加入条件を満たしている場合は厚生年金に加入することになります。

また年金の受給は65歳からとなりますが、「65歳を過ぎているのに給与から引かれているけど、間違っているのでは?」と疑問に思われる方もおられるかもしれません。

 

では、いつまで加入が発生するのでしょうか。

答えは70歳までとなります。65歳より年金が受給できますが、社会保険の厚生年金加入期間は70歳までとなります。

それ以降は加入することはできません。(70歳以降は要件を満たす場合、任意で加入が可能となる場合があります。)

ただし、被保険者が65歳に達した時点で年金受給要件を満たしている場合は、被扶養者の取り扱いが変更となります。

70歳到達以降も継続して雇用され標準報酬月額の変更がある場合は、「厚生年金保険70歳以上被用者該当届」の提出が必要となり、賞与支払届や算定基礎届、月額変更届の提出も必要となりますので忘れないようにしましょう。

また、健康保険同様に同月得喪が発生する場合があります。同月得喪となった場合、健康保険とは対応が異なり注意が必要となります。

どのような部分に注意が必要なのでしょうか。

 

原則として、健康保険と同様に同月得喪の場合その月の厚生年金保険料が発生しますので、給与より控除する必要があります。

その後、退職した従業員が同じ月に再度厚生年金を取得したり、国民年金に加入したりした場合は給与より控除した厚生年金保険料の納付が不要となり、従業員へ還付する処理が発生します。

還付が発生する場合は、年金事務所より会社に書類が送付されますので、還付先口座番号等を確認し手続きを行う必要がございます。

還付手続きがめんどうだからといって、はじめから控除しないとなると本当に返金が発生するか確定していないため、後日従業員より改めて徴収しないといけない処理が発生する可能性もあるため、給与からは一旦控除するようにしましょう!

 

被扶養者について厚生年金保険料も含めてみていきましょう。

厚生年金の扶養制度は被保険者の配偶者のみとなり、20歳以上60歳未満の人となります。

扶養認定された場合は、被扶養者の国民年金保険料は発生しなくなります。もし、配偶者が20歳未満の場合は厚生年金の扶養者には該当せず20歳になった時点より扶養者となります。(健康保険の扶養は20歳未満でも該当となります)

 

では、具体的な被保険者の年齢と被扶養者の年齢の場合を見ていきましょう!

配偶者が60歳に到達した場合

前述したように厚生年金の扶養制度は20歳以上60歳未満の人となります。

よって、配偶者が60歳に到達した場合は厚生年金の被扶養者の資格を失います。

ですが、被扶養者が希望する場合は、任意で国民年金に加入することが可能となり被扶養者ご自身で手続きをする必要があります。

該当する従業員がいらっしゃる場合は、ご案内できるようにしておくと良いでしょう。(ただし、被保険者の厚生年金保険料の保険料に変更はありませんので、今までと同額の保険料を控除する必要があります。)

被保険者が65歳に達した場合

被保険者が65歳に達した際に、被保険者が老齢基礎・厚生年金などの受給件がある人は、国民年金の被保険者には該当しなくなります。

そうなりますと、配偶者も国民年金の被扶養者には該当しなくなり、配偶者に国民年金保険料が発生することになります。

こちらの手続きは会社ではできないため、配偶者ご自身で行っていただく必要がございますので受給資格の有無に関わらずご案内できるようにしておきましょう。

被保険者が70歳、配偶者が60歳未満の場合

厚生年金の加入要件は70歳までとあります。

よって、70歳に到達すると厚生年金の資格を喪失します。

となりますと、必然的に配偶者の方も被扶養者の資格を失うため、国民年金へ加入する必要があり国民年金保険料が発生します。

国民年金の加入手続きは、ご自身で行っていただく必要がありますので社員には忘れずに案内しましょう。

 

ポイント

☆定年退職

60歳や65歳で定年退職となる方もおられるかと思います。

定年退職後に報酬が大きく変わり、定年退職前の報酬と2等級以上の差がある場合は、同日得喪の手続きが可能となります。

同日得喪とは、定年退職の時の資格喪失日と再雇用の資格取得日が同日である場合に社会保険料を軽減できる手続きとなります。(60歳以上で退職し1日も空けることなく再雇用された労働者が対象です)

添付書類には就業規則や雇用契約書が必要となりますが、社会保険料を軽減できるため忘れずに行いましょう。

再雇用せずに退職となる場合、通常の退職と同様の手続きを行いましょう

 

☆死亡退職

被保険者の方が病気や不意の事故で亡くなられた場合は、会社にて喪失の手続きが必要となります。

喪失日は死亡日の翌日となり、手続きは退職の手続きと同様となります。

死亡退職の場合、ご家族様も不安を抱えておられますので遺族年金や埋葬料等、手続きのご案内ができるといいでしょう。

被扶養者には、健康保険や国民年金の手続きが発生しますので併せてご案内できるようにしておきましょう。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

社会保険制度は到達年齢により加入できるできないや、扶養家族の手続が発生するなど社員だけにとどまらないことが多く、社員より質問を受けることも頻繁に発生しますので漏れなく案内できるように事前に資料を作っておくなどして準備しておきましょう。

 

執筆者:菊川美幸

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