会社に勤めていれば社会保険に入るもの…というイメージを持っている方も多いと思いますが、実は会社勤めでも社会保険に入らないケースがあります。
「従業員から社会保険に入りたい」と言われたけどどうすればいい?うちの会社は社会保険に入らないといけないの?といったお悩みを持つ事業主様も多いのではないでしょうか。
今回は社会保険がない会社について詳しく解説していきます。
目次
社会保険とは?
そもそも社会保険とはどういったものなのでしょうか。
一般的に社会保険と言えば、健康保険、介護保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険といった公的保険制度の総称を指し、狭い意味では健康保険・介護保険・厚生年金保険の3つが社会保険と呼ばれます。
労災保険・雇用保険の2つは合わせて労働保険と呼ばれることもあります。
社会保険に加入する要件は保険制度ごとに異なっており、要件を満たす会社は強制的に社会保険に加入することになります。
社会保険の加入要件
それでは、社会保険に加入する要件とはどのようなものでしょうか。
加入要件には大きく「会社に対する要件」と「従業員に対する要件」の2つがあります。
各保険制度について、それぞれの加入要件を詳しく見ていきましょう。
(1) 健康保険・厚生年金保険
会社の要件:①株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)②従業員が常時5人以上の個人の事業所(農林漁業、サービス業などを除く)
従業員の要件:①社会保険に加入している会社に常用的に使用される75歳(厚生年金保険は70歳)未満のもの②1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が正社員の4分の3以上であるパート・アルバイト(※)
※被保険者数が101人以上となる会社(特定適用事業所)では以下をすべて満たす方も加入対象になります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金が月額8.8万円以上
- 学生でないこと
(2) 介護保険
会社の要件:なし
従業員の要件:40歳以上
(3) 労災保険
会社の要件:労働者を1人でも使用する事業所(一部の農林水産業を除く)
従業員の要件:すべての労働者
(4) 雇用保険
会社の要件:労働者を1人でも使用する事業所(一部の農林水産業を除く)
従業員の要件:①1週間の所定労働時間が20時間以上であること②継続して31日以上雇用されること③学生でないこと
社会保険のない会社はどんなところ?
社会保険の加入要件がわかったところで、具体的に社会保険に加入していない会社にはどのようなものがあるか見ていきましょう。
健康保険・厚生年金保険については、常時4人以下の従業員を使用する以下の個人事業が該当します。
- 農林水産業
- 宿泊業や飲食等の接客・娯楽の事業
- 理容・美容の事業
- 映画の製作や演劇等の事業
- 神社や寺院などの宗教の事業 等
また労災保険・雇用保険については、個人経営で常時4人以下の従業員を使用する農業、水産業や、個人経営で労働者を常時使用しない林業等が該当します。
社会保険のない会社はどうするの?
社会保険の加入要件を満たさない場合はどうすればいいのでしょうか。
上記で述べたように、会社が社会保険に加入していない場合は、その従業員も社会保険に加入することができません。
また、会社が社会保険に加入している場合でも、従業員が加入要件を満たしていない場合は社会保険への加入はできなくなります。
その場合は個人で国民健康保険や国民年金に加入することになります。
国民健康保険・国民年金の加入手続きはお住いの市区町村で行います。
加入要件を満たす場合の手続き
自分の会社が加入要件を満たしていた!といった場合は、社会保険の加入手続きをする必要があります。
手続きの方法は以下の通りです。
(1) 健康保険・厚生年金
加入要件に該当した時から5日以内に「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」に各種添付書類を添えて管轄する事務センター(年金事務所)に提出します。提出方法は郵送、窓口持参のほか電子申請も可能です。
(2) 労災保険
加入要件に該当した日の翌日から起算して10日以内に「保険関係成立届」を所轄 の労働基準監督署又は公共職業安定所に提出します。
そして、その年度分の労働保険料(その年度の末日までに労働者に支払う賃金の総額の見込額に保険料率を乗じて得た額)を概算保険料として申告し、保険料を納付します。
(3) 雇用保険
加入要件に該当した日の翌日から起算して10日以内に「雇用保険適用事業所設置届」および「雇用保険被保険者資格取得届」を所轄の公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。
社会保険に入るメリット
社会保険に入ると様々なメリットがあります。
例えば、健康保険や厚生年金では保険料を労使折半で負担するため、保険料の自己負担額が安くなる可能性があります。
また、国民健康保険にはない給付が受けられたり、将来もらえる年金額が増えたりといったメリットがあります。
雇用保険に加入している場合は、育児休業・介護休業中の給付や会社を辞めた際の失業手当などを受けることができます。
また、福利厚生が充実する・採用がしやすくなる・助成金を受けられることがあるといった会社側のメリットもあります。
社会保険に入りたい!任意加入の手続き
加入要件を満たさない会社が社会保険に加入したい場合はどうすればいいのでしょうか。
この場合は厚生労働大臣の認可を受けることで社会保険に任意加入することができます。ただし、加入した場合は労使ともに保険料の負担が発生するため、健康保険・厚生年金保険・雇用保険に加入するためには被保険者となるべき労働者の2分の1以上の同意が必要となります。
会社設立時に社会保険はいつから加入するのか
健康保険・厚生年金保険の新規適用事業所の届出は、要件に該当したときから5日以内に行います。
法人の事業所であれば、社会保険の加入義務のある従業員(法人の代表者を含む)を1人でも雇用すれば要件に該当します。
労災保険・雇用保険では、要件に該当した日の翌日から起算して10日以内に届出を行います。
こちらは法人の代表者を除き、加入義務のある従業員を1人でも雇用すると要件に該当します。
まとめ:困ったときは専門家に相談しよう!社会保険労務士に相談するメリット
自分の会社が社会保険に入るべきかわからない、従業員が入りたいと言っているが加入要件に該当するの?といった疑問や、日々の業務をこなしながら手続きまでする時間がない!という事業主様も多いのではないでしょうか。
そんなときは、専門家に相談することをおすすめします。
社会保険労務士は、社会保険や労働関連の法律の専門家として、人事や労務管理のサポートをする国家資格です。
わたしたちの会社では、社会保険加入のご相談・各種手続きの代行はもちろん、法改正についての情報提供、従業員とのトラブルについてのご相談など、親身になってサポートさせていただきます。
ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください!