個人事業主が会社を設立して法人となった場合、社会保険は今まで通りでいいのでしょうか?
原則として、法人の事業所は社会保険に加入しなければなりません。
そこで今回は、社会保険の種類や加入方法・加入時期について詳しく解説していきます。
目次
そもそも社会保険とは?
社会保険という言葉はよく使われていますが、具体的にはどういったものなのでしょうか。
一般的に社会保険と言えば、健康保険、介護保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険といった公的保険制度の総称を指します。
狭い意味では健康保険・介護保険・厚生年金保険の3つが社会保険と呼ばれ、労災保険・雇用保険は合わせて労働保険と呼ばれることもあります。
健康保険・厚生年金保険と対比されるものとして、国民健康保険や国民年金があります。
国民健康保険には個人事業主や健康保険の対象とならないパート・アルバイトの方等が加入します。
国民年金には基本的に国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入していますが、厚生年金保険は国民年金に上乗せする形で加入します。
社会保険に加入する要件は保険制度ごとに異なり、また要件を満たす場合は必ず加入しなければならないため、手続きを忘れていた!という場合は遡って保険料を払わなければならない可能性もあります。
社会保険の加入義務
法人化した場合に特に注意しなければならないのが、健康保険・厚生年金保険の加入です。
また個人事業であっても、一定の要件を満たしている場合には社会保険に加入する必要があります。
事業所の社会保険の加入要件は以下のようになっています。
法人の事業 | 個人事業
(一部業種を除く※) |
|
社会保険
(健康保険・厚生年金) |
すべての事業所 | 常時5人以上の従業員を
使用する事業所 |
労働保険
(労災保険・雇用保険) |
労働者を雇用する事業所 |
※農林漁業、サービス業など
例えば、従業員3人の製造業の個人事業であれば社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入は任意ですが、この事業が法人となった場合は加入が必要となります。
また、代表者1人のみの事業であっても、法人化した場合は社会保険に加入する必要があります。
このように法人化すると、今まで社会保険に加入していなかった事業所でも強制加入となる場合があります。
法人化した場合の加入手続きは?いつから入ればいいの?
法人化して社会保険の加入対象となった場合、いつ、どのような手続きを行ったらいいのでしょうか。
保険加入の手続きや提出期限については保険ごとに異なり、以下のようになります。
健康保険、介護保険、厚生年金保険
健康保険・厚生年金保険の手続きはまとめて行うことができ、5日以内に必要書類を事業所を管轄する事務センターに届け出ます。
なお、介護保険は個別の手続きは不要です。
必要書類
- 健康保険・厚生年金新規適用届
- 法人登記簿謄本など
- 健康保険・厚生年金被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者(異動)届など
労災保険・雇用保険
従業員を雇用したときは、その翌日から起算して10日以内に、保険関係成立届を所轄の労働基準監督署または公共職業安定所に届け出ます。
そして、その年度分の労働保険料(保険関係が成立した日からその年度の末日までの間に労働者に支払う賃金の総額の見込額に保険料率を乗じて得た額)を概算保険料として申告・納付します。
また、雇用保険の適用事業となった場合は、上記のほかに雇用保険適用事業所設置届および雇用保険被保険者資格取得届等の書類を所轄の公共職業安定所に提出します。
なお、労働保険は労働者のための保険となるため、役員のみの会社などで労働者がいない場合は加入の必要はありません。
社会保険に加入した場合の保険料は?
社会保険に加入した場合、保険料はどのように変わるのでしょうか。
個人事業であれば、従業員は各々で国民健康保険等に加入し、保険料は全額自分で支払っています。
一方、社会保険に加入した場合は、それぞれの料率に応じた一定額を会社が負担することになります。
具体的には、健康保険・介護保険・厚生年金保険では「標準報酬月額×保険料率」で計算された金額、労災保険・雇用保険では「対象者の賃金総額×保険料率」で計算された金額となります。
参考までに、令和5年4月1日時点での各保険の事業主の負担率は以下のようになっています。なお、健康保険・介護保険・厚生年金保険については、計算された金額を事業主と労働者で折半し負担します。
東京都 | 大阪府 | |
健康保険
※各都道府県ごとに料率が異なります。 |
10.00% | 10.29% |
介護保険 | 1.82% | |
厚生年金保険 | 18.30% | |
労災保険 | 業種による
(例:飲食店、介護事業など→3/1000) |
|
雇用保険 | 9.5/1000
※農林水産・清酒製造・建設の事業を除く |
このようにコストの面からみれば社会保険の加入はデメリットのように感じるかもしれませんが、老後の年金が増えたり休業した場合に所得保障があったりと、加入には様々なメリットがあります。
また、社会保険に加入していることで求人の応募が増え、採用がしやすくなるなど人員確保の面でもメリットがあります。
法人を設立する際には、それぞれのメリット・デメリットや具体的な負担額について、慎重に検討をしていく必要があります。
ややこしい手続きは専門家におまかせ!保険加入については社会保険労務士に相談しよう
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