近年の企業活動において避けて通れないキーワードのひとつが「コンプライアンス(法令遵守)」です。
法改正や世間の目が厳しくなる中、企業の信頼を守るためにも、コンプライアンス意識の強化は必要不可欠となっています。
今回は、コンプライアンスの定義、よくある違反事例、昨今の芸能界やスポーツ界の事例、そして企業が取るべき具体的な対策について解説します。
事業主や人事労務のご担当者様にとって、実務に活かせる内容となっておりますので、ぜひ参考になさってください。
目次
コンプライアンスとは?
コンプライアンスとは、「法令遵守」を意味する言葉ですが、単に法律を守るということにとどまりません。
広義では、以下のようなものも含まれます。
- 法律、条例の遵守
- 社内規程や業界ルールの順守
- 社会的倫理やモラルの尊重
- 顧客や取引先との誠実な関係の維持
- 従業員に対する公正な対応
つまり、コンプライアンスとは、「企業として正しく、誠実にふるまうこと」と言えるでしょう。
これが守られていないと、法的なリスクだけでなく、企業イメージの失墜、採用難、人材流出など、経営そのものに大きな打撃を与える可能性があります。
実際に起きているコンプライアンス違反事例
【事例1】労働時間の過少申告・未払い残業
某中小企業では、慢性的な人手不足の中で、従業員に長時間労働を強いていながら、残業代を適切に支払っていませんでした。
労働基準監督署からの調査により発覚し、企業名の公表と数千万円単位の未払い賃金支払い命令を受けました。
リスク:行政指導・罰金、訴訟、風評被害、従業員の離職
【事例2】パワハラ・セクハラの放置
ある会社で、上司によるパワハラ・セクハラの訴えを社員が何度も相談していたにもかかわらず、社内で適切な対応を取らなかった結果、当該社員がうつ状態になり退職。
後に訴訟となり、企業側が損害賠償を支払う結果に。
リスク:企業責任による賠償、労基署・労働局の介入、企業イメージの毀損
【事例3】個人情報の漏えい
従業員の給与情報や顧客の個人情報を、外部に誤送信してしまった企業では、その情報がSNSで拡散され、謝罪文の掲載と信頼回復に莫大なコストがかかりました。
リスク:個人情報保護法違反、顧客離れ、マスコミ報道による風評被害
【最近の話題】芸能界・スポーツ界に見るコンプライアンス違反
アイドル事務所の性加害問題
2023年以降、某アイドル事務所の元社長による性加害問題が世界的に報道され、事務所は名称変更・経営刷新を余儀なくされました。
長年にわたる隠ぺい体質と被害の放置が、企業の存続にまで影響した典型例です。
教訓:組織の風土として「声を上げられない」「上層部が問題を放置する」体質があると、数十年後にでも重大なコンプライアンス問題として噴出し得るという警鐘です。
オンラインカジノ問題と違法賭博のリスク
2024年には、複数の有名芸能人やスポーツ選手によるオンラインカジノ利用が週刊誌などで大きく報道されました。
特に、某プロ野球選手が海外サーバーのオンラインカジノを長期間利用していたことが発覚し、球団からの厳重注意、スポンサー契約の打ち切り、自主謹慎などの処分が相次ぎました。
日本では、オンラインカジノが海外の合法サイトであったとしても、日本国内からアクセスして賭博行為を行えば「賭博罪」に該当する可能性が高いというのが法的な見解です。
刑罰の対象になる可能性もあり、イメージ失墜・契約打ち切りなど、影響は極めて深刻です。
教訓:個人の趣味や行動であっても、それが法に触れる可能性がある場合、企業や団体は速やかな対応を求められます。
さらに重要なのは、従業員教育を通じて「何が違法で、どんなリスクがあるか」を正しく周知しておくことです。
【重要】すでに違法行為に関わってしまった従業員がいる場合の対応
オンラインカジノのように、本人が「違法とは知らなかった」としても、日本の法律に照らして違法性が認められるケースでは、状況を放置することは企業・個人双方にとって大きなリスクになります。
もし、社内でそういった行為に関わってしまった社員や役員がいた場合には、外部の専門家(弁護士・社労士等)に相談のうえ、速やかに自首を検討することが極めて重要です。
自首には、以下のようなメリットがあります。
- 刑の減軽:刑法第42条により、自首によって刑が軽減される可能性があります。
- 企業への波及を最小限に抑えられる:マスコミ報道やSNS拡散が始まる前に自ら行動することで、信用の失墜を最小限に食い止められます。
- 誠実な対応として評価される可能性:自主的な申告や謝罪は、社会的にも「反省している姿勢」として受け止められる傾向があります。
企業側としても、問題が発覚した場合は、「黙認」「見て見ぬふり」は絶対に避け、誠実な調査と必要に応じた指導・通報対応を行うべきです。
その際、外部の専門家の関与は非常に有効です。
芸能人による薬物・反社会的行動
有名俳優やミュージシャンの薬物使用、脱税疑惑、反社会的勢力とのつながりなども、近年たびたび報道されており、出演作品の差し替えや契約解除など、関係企業にも莫大な損害が及んでいます。
教訓:従業員・所属タレント・関係者の行動が、所属団体や契約企業の信頼をも損なう時代です。企業全体として「違反を許さない文化」を作っていく必要があります。
企業が取り組むべきコンプライアンス対策
社内規程や就業規則の整備・見直し
企業規模の大小を問わず、労働関係法令やハラスメント防止規程、情報管理規程などを明文化し、定期的に見直すことが重要です。
- ハラスメント防止規程を就業規則に盛り込む
- リモートワーク時代に対応した労働時間管理方法の明記
- マイナンバーや個人情報の管理体制を明文化
教育・研修の実施
「規程があるだけ」では意味がありません。
新入社員、管理職、経営層、それぞれに合わせたコンプライアンス研修を行うことで、全体の意識を高めましょう。
- ハラスメント研修(年1回推奨)
- 労務管理に関する最新法改正研修
- 倫理的判断が求められるケーススタディ研修
- 「私的な行動」が企業に与える影響に関する教育(賭博・SNS投稿など)
内部通報制度の導入
社員が安心して問題を報告できるように、外部窓口(社労士事務所や弁護士など)を活用した内部通報制度を導入することで、不正の早期発見と自浄作用を促します。
リスクチェックと定期監査
定期的に労働時間、賃金、ハラスメントの実態、個人情報管理状況などを社外の第三者に依頼して監査することで、リスクの「見える化」が進みます。
社会保険労務士ができること
社会保険労務士は、労務・人事の専門家として、就業規則の整備・改定やコンプライアンス研修の講師、外部通報窓口の受託など企業のコンプライアンス体制構築を支援します。
ベスト・パートナーズでは、企業と従業員の橋渡し役として実務的で継続的な支援が可能です。
まとめ
コンプライアンス違反は、法的な問題にとどまらず、企業の信頼や存続すら脅かす深刻なリスクをはらんでいます。
SNSやメディアを通じて一気に拡散する現代では、「知らなかった」では済まされない問題が日常的に起こり得ます。
企業の持続可能な発展のために、今こそコンプライアンスへの取り組みを強化する時です。
ベスト・パートナーズでは、御社の実情に即したコンプライアンス対策を親身にご提案させていただきます。お気軽にご相談ください。