育児休業とは
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」によって定められた、
「子を養育する労働者が法律に基づいて取得できる休業」をいいます。
簡単に言うと「1歳に満たない子どもを養育する労働者が法律に基づいて養育のために休業できる制度」です。
女性の社会進出や共働き世帯の増加によって仕事と育児を両立しやすくするため「1991年」に制定され翌年から施行されました。
また、2022年には男性育休制度「パパ育休」が新設され、男性育休の取得を促進し、より子育てをしやすい環境になりました。
休業中は「育休手当」と呼ばれる「育児休業給付金」が支給されるので、育児によって退職などのキャリアを中断せず勤務し続ける事が可能になります。
育児休業は、「1歳未満」の子どもを養育する労働者より申し出があった場合は、必ず取得させなければならない義務があります。
産休と育児休業の関係&違い
「産休」は「産前産後休業」と言い、産前42日前(出産予定日含む)産後56日の期間になり、
「育児休業」は産後57日~出産予定日の前日まで取得可能です。
例:出産予定日:2023年4月1日
産前:2023年2月19日~2023年4月1日
産後:2023年4月2日~2023年5月27日
育児休業期間:2023年5月28日~2024年3月31日まで(子どもが1歳になる誕生日の前日まで)
ちなみに今回のタイトル「育児休業給付金」は「雇用保険法」を根拠にしており、「産休中:出産手当金」は
健康保険法を根拠にしていますので、「産休」は今回省略します。
育児休業制度の内容
育児休業には様々な制度があります。下記紹介していきます。
- 育児休業制度
子が1歳に達するまで、申し出により育児休業が取得できます。原則は1年ですが、最長で2年まで
延長可能です。
- パパママ育休プラス
パパ・ママともに育休を取得する場合、1歳2ヶ月まで取得できます
- 産後パパ育休(出生時育児休業)
子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分けて取得できます。(詳しくは後述参照)
- 短時間勤務等の措置
3歳までの子を養育する労働者において、労働者が希望すれば短時間勤務(1日原則6時間)できる措置を
義務付けています。
- 子の看護休暇制度
小学校就学前までの子1人につき年5日を限度として看護休暇が取得できます。
- 時間外労働の制限
小学校就学前までの子を養育する労働者が請求した場合、1ヶ月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限できます。
- 転勤についての配慮
労働者を転勤させる場合、育児状況を配慮する義務を企業に課しています。
- 所定外労働(残業)の制限
3歳に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合、所定外労働を制限できます。
- 不利益取扱いの禁止
育児休業等の申出や取得等を理由とする解雇、その他の不利益な取扱いを禁止しています。
- 深夜業の制限
小学校就学前までの子を養育する労働者が請求した場合、深夜の労働を制限できます。
育児休業給付金とは
育児休業給付金は、育児休業取得中に雇用保険から支給される給付金です。
育休中の収入減少を緩和する目的で支給されます。
給付金は雇用保険から支払われるため、対象者は雇用保険に加入しており、育休取得後に職場復帰する予定の労働者になります。
また、育児休業開始前の2年間に11日以上勤務した月が12ヶ月以上あることが条件です。
1ヶ月あたりの支給額は「育休開始時の賃金日額×支給日数の67%、育休開始から181日以降は50%」となっています。
給付金は非課税であるため所得税の対象にはならず、次年度の住民税においても収入に算定されません。
出生時育児休業給付金の計算方法
出生時育児休業給付金は、次の計算式で算出します。
支給額=休業開始時賃金日額×休業期間の日数(28日が上限)×67%
休業開始時賃金日額とは、原則として育児休業開始前6ヶ月間の賃金を180で割った金額です。
完全な賃金月が6ヶ月に満たない場合は、賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上である賃金月6ヶ月の間に支払われた賃金の総額を180で割った額になります。
例として、休業開始時賃金日額が9,000円、休業期間が20日間のケースで支給額を算出してみましょう。
支給額=9,000円×20日×67%=120,600円
なお、出生時育児休業期間に就労して事業者から賃金が支払われた場合には、賃金額に応じて以下の通り支給額が調整されます。
支払われた賃金の額 →支給額
「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」 の13%以下→全額支給
「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」 の13%超~80%未満→「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」×80%から、賃金額が差し引かれる
「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」 の80%以上→支給されない
先ほどの例で、休業期間中に5日間就労して45,000円の賃金を受け取ったケースを考えてみましょう。
支給額=(9,000円×20日×80%)-45,000円=99,000円
産後パパ育休とは
2022年10月1日から施行された「産後パパ育休(出生時育児休業)」という制度です。
施行前にも「パパ育休」ありましたが、新たに思考されました。
産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて取得できる休業で、1歳までの育児休業とは別に取得できる制度です。
男性の育児休業取得促進のため、取得ニーズが高い子の出生直後の時期(子の出生後8週間以内)に、これまでよりも柔軟で取得しやすい休業として設けられました。
取得可能日数:子の出生後8週間以内に4週間(28日)まで取得可能です。
通常の育児休業の様に「出生時育児休業給付金」の対象になります。
出生時育児休業給付金の対象 イメージ図(厚生労働省HP抜粋)
出生時育児休業給付金の対象外 イメージ図(厚生労働省HP抜粋)
また、休業中は原則就労不可ですが、労使協定を締結している場合に限り労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能です。
まとめ
現在、共働き世帯数が過去最高になっています。
女性の育児休業取得率は約85~90%、男性は約10~15%と男女でかなりの差が開いています。
まだまだ男性育休の取得率が低いですが、取得率は過去最高を記録しています。
また、育児休業中の社員の生活を支える基盤となるのが育児休業給付金です。
社員側も必要な書類を漏れなく用意する必要がありますが、基本的な申請手続きは企業側が行います。
社員への制度説明や復帰後の相談なども必要ですので、基本的な知識を習得し、社員が安心して育休に入れるよう、サポート体制を整えておきましょう。