従業員の離職を防ぎ、仕事と育児・介護を両立できるようにするための措置には育児休業、介護休業以外の選択肢も用意されています。
主なものは短時間勤務等の措置と子の看護休暇・介護休暇です。今回はそれらの制度について確認していきます。
育児における短時間勤務の措置
育児・介護休業法では3歳に満たない子を養育する労働者に対する短時間勤務制度が義務化されており、労働者の希望があれば会社は短時間勤務を認めなければなりません。
短時間勤務制度の対象となる労働者は次の①~④すべてに該当する労働者です。
- 1日の所定労働時間が6時間以下ではない
- 日々雇用される者ではない
- 短時間勤務制度の期間中に育児休業(産後パパ育休含む)をしていない
- 労使協定により適用除外されていない
(※労使協定で適用除外とできるのは次の条件です。①勤続1年未満②所定週2日以下③短時間勤務が困難な業務に従事する者)
要件を満たせば、正社員だけではなく有期契約労働者やパートタイマー、アルバイトなども短時間勤務の制度を利用できます。
短時間勤務制度は原則として、1日の所定労働時間が6時間とする措置を含むものとする、というルールがあります。
これはたとえば所定の労働時間が8時間の事業場で労働時間を3/4に短縮するという趣旨であり、必ずしも6時間に短縮しなければならないわけではありません。
もともとの所定の労働時間がたとえば7時間45分の場合は5時間45分とすることも許容されます。
また、所定の労働時間が8時間の事業場で、6時間の短時間勤務とあわせて7時間の短時間勤務の制度も設けることもできます。
こういった柔軟な運用は労働者の選択肢を増やすことができるので望ましいとされています。
対象家族の介護のための短時間勤務等の措置
育児・介護休業法では要介護状態にある対象家族を介護する労働者に対する短時間勤務制度も育児同様義務化されており、労働者の希望があれば会社は短時間勤務を認めなければなりません。
介護のための短時間勤務については、連続する3年以上の期間におけるものであること、また2回以上の利用ができることが必要です。
短時間勤務制度の対象となる労働者は次の①②すべてに該当する労働者です。
- 日々雇用される者ではない
- 労使協定により適用除外されていない
(※労使協定で適用除外とできるのは次の条件です。①勤続1年未満②所定週2日以下)
育児の短時間勤務制度同様、要件を満たせば、正社員だけではなく有期契約労働者やパートタイマー、アルバイトなども短時間勤務の制度を利用できます。
ちなみに、介護対象家族は配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
ちなみに、「子」は法律上の親子関係がある子(養子含む)をさします。
また、要介護状態とは負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態、のことです。
介護の短時間勤務等の措置については次のいずれかの方法により設定します。
- 短時間勤務制度(1日の所定労働時間の短縮/週又は月の所定労働時間の短縮/週又は月の所定労働日数の短縮など)
- フレックスタイム制
- 時差出勤の制度
- 労働者が利用する介護サービス費用の助成など
これらの制度を設定する際は労働者が就業しつつ対象家族を介護することの負荷を軽くできる内容であることに配慮が必要です。
これらの制度はすべて設定する必要はありませんが、厚労省は可能な限り労働者の選択肢を広げるようにすることが望ましいとしております。
特に短時間勤務制度については実質的に負荷を軽くすることができるものであるよう配慮しましょう。
育児休業の短時間勤務同様、所定の労働時間が8時間の場合は2時間以上の短縮が可能であることが望ましいでしょう。
これらの制度の利用期間は、利用開始の日から連続する3年以上の期間で2回以上です。
たとえば時短制度を利用開始後、1年でフルタイム勤務となったとしても、利用開始から3年以内であればもう1度、2回目の時短制度を利用できます。
もちろん、3年以上の期間をすべて時短制度を利用してもかまいません。
子の看護休暇・介護休暇とは
育児休業・介護休業とは別に、子の看護休暇制度と介護休暇制度というものがあります。
これは休業することなく、一定の条件下で年次有給休暇とは別に取得できる休暇です。それぞれ内容を確認しましょう。
子の看護休暇
子の看護休暇とは、負傷し、または疾病にかかった子の世話または疾病の予防を図るために必要な世話を行う労働者に対して与えられる休暇制度です。
疾病の予防を図るための必要な世話、とは予防接種や健康診断を受けさせることをいいます。
小学校就学前の子を養育する労働者が会社に申し出ることで、1年度において5日(小学校就学の始期に達するまでの子が二人以上の場合は10日)を限度として取得することができます。
子の看護休暇は1日または時間単位で取得可能です。
子の看護休暇を取得できるのは次のいずれにも該当しない労働者です。
- 日々雇い入れられる者
- 労使協定で除外されている者(勤続6か月未満、週の所定労働日数が2日未満)
申出は次の内容を明らかにしなければなりません。
- 労働者の氏名
- 申出に係る子の氏名・生年月日
- 子の看護休暇を取得する年月日
- 申出に係る子が負傷し、もしくは疾病にかかっている事実、または疾病の予防を図るために必要な世話を行う旨
介護休暇
介護休暇とは、要介護状態にある対象家族の介護や世話を行う労働者に与えらえる休暇です。
要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者は会社に申し出て、1年度において5日(対象家族が2人以上の場合は10日)を限度として取得することができます。
介護休暇も子の看護休暇同様、1日または時間単位で取得可能です。
介護休暇を取得できるのは次のいずれにも該当しない労働者です。
- 日々雇い入れられる者
- 労使協定で除外されている者(勤続6か月未満、週の所定労働日数が2日未満)
申出は次の内容を明らかにしなければなりません。
- 労働者の氏名
- 対象家族の氏名及び労働者との続柄
- 介護休暇を取得する年月日
- 対象家族が要介護状態にある事実
子の看護休暇、介護休暇も要件を満たせばパートタイマーやアルバイトでも取得可能です。
これらの制度における「1年度」とは原則4/1から翌3/31までの期間を指します。別の定めをしたい場合は、就業規則等に規定することができます。
時間単位の取得については、始業からまたは終業時刻までの連続するものであり、中抜けについては認めなくても構いません。
もちろん、中抜けの取得を認めることもできます。
時間単位で取得する場合の時間については、1日の所定労働時間未満とします。所定労働時間と同じ時間数を取得するときは1日単位での取得となります。
時間単位で取得する場合の時間数は1日の所定労働時間とします。
1時間未満の端数がある場合は切り上げます。
つまり、所定労働時間7時間30分の労働者については、時間単位だと8時間分の休暇で1日分となります。
子の看護休暇・介護休暇について、有給とするか無給とするかは会社が定めることができます。
また、5日限度とされていますが、上回ることは差し支えありません。詳細については就業規則等で個別に定めて周知しておくようにしましょう。
おわりに
今回は育児や介護の短時間勤務制度や子の看護休暇・介護休暇についてご説明いたしました。
育児休業、介護休業の詳細についてもご案内がありますのでぜひご一読ください!
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