退職と解雇の違いと種類を解説!

退職も解雇も会社との雇用関係が終わるという点では同じです。

しかし、退職と解雇は意味合いが全く異なります。

今回は退職と解雇の違い、それぞれの種類について解説いたします。

退職と解雇の違い

退職と解雇には労働契約を終了させる効果としては同じでも、相違点が多くあります。

双方の違いは次のような点が挙げられます。

退職金

退職金規程が定められている場合、会社はその支給要件を満たす限り退職金を支払うことになります。

ただ、懲戒解雇を受けた従業員に対しては退職金の一部または全部を支給しない、と定められていることが多いです。

ただ、懲戒解雇イコール退職金の支給なし、ではありませんので注意が必要です。

これまでの勤続による働きが消滅するほどの重大な背信行為があるような場合でない限り、不支給にはなかなかできるものではありません。

助成金

厚生労働省が管轄している助成金は、主として雇用に関係するものが多いです。

新しく従業員を雇用する、在職中の従業員の教育を目的とする助成金の場合、会社都合による解雇は不支給要件に該当します。

このため、支給された助成金を返還しなければならないことも起こり得ます。

助成金の受給を検討している会社は慎重な判断が必要です。

以下に代表的な助成金を紹介します。

  • キャリアアップ助成金 正社員化コース
  • キャリアアップ助成金 人材育成コース
  • トライアル雇用奨励金
  • 特定求職者雇用開発助成金

 

雇用保険の失業給付

退職、解雇のいずれも雇用保険の失業給付を受けられますが、その受給資格が異なります。

自己都合退職の場合、離職日から遡って2年の間に最低12ヶ月以上働いた期間があることを要しますが、解雇の場合は、離職日から遡って1年間に6か月以上働いた期間を要します。

つまり、会社都合退職は自己都合退職よりも就労していた期間が短くて済みます。

 

給付開始までの日数についても、「自己都合退職」はハローワークに書類を提出してからの7日間の待機期間の後、2カ月間の給付制限の期間を経て受給の開始となります。

解雇は、ハローワークに書類を提出してから7日間の待機期間を経て失業給付金を受けることができます。

つまり、会社都合退職は自己都合退職よりも早く失業給付金の受給が開始されます。

給付日数も、自己都合退職よりも会社都合退職の方が長く受給できることがほとんどです。

以上のとおり、失業給付金に関しては、自己都合退職よりも会社都合退職の方が有利となります。

 

自己都合退職 会社都合退職
受給要件 離職日前2年間に12か月以上勤務 離職日前1年間に6ヶ月以上勤務
受給開始の時期 7日の待期期間+給付制限期間2カ月 7日の待期期間のみ
給付日数 90日~150日 90日~330日

 

経営危機などで整理解雇が行われた場合は会社都合退職となります。

一方、労働者が業務上横領などを行ったことにより懲戒解雇した場合には自己都合退職の扱いとなります。

再就職

退職後の採用活動で、履歴書の職歴の欄に会社都合により退職と記載することによって、

自己都合による退職よりも不利に働く可能性が高くなります。

採用面接する際に、採用担当者はおそらく「解雇されたのですか?」や「どういう理由で解雇されたのでしょうか?」などと質問することが多いからです。

退職の種類

退職は使用者(会社)の意思表示によらない労働契約の解除のことをいいます。

具体的には、労働者が転職や結婚、妊娠、出産、引っ越し、家庭の事情などの労働者本人の意向や都合で退職を申し出ることです。

退職には「辞職」「合意解約」「定年退職」「休職期間満了による退職」といった種類があります。

辞職

辞職は、労働者の側から一方的な意思表示によって労働契約を終了するものです。

期間の定めのない労働契約の辞職であれば、労働者はいつでも解約の申し入れをすることが可能です。そして、解約の申し入れから2週間を経過することによって労働契約は終了します。

 

期間の定めのある雇用契約の場合、「やむを得ない事由」があるときや、1年以上勤務したときには直ちに雇用契約の解約ができます。

逆に言うと、「やむを得ない事由」がなく、1年以上経過していないのであれば雇用契約の解約はできないことになります。

合意解約

「合意解約」は、労働者と使用者(会社)との合意で労働契約を解約することをいいます。

「依願退職」が合意解約にあたり、合意退職と呼ぶこともあります。

労働者が退職願を提出すると、合意解約の申し込みをしたことになり、使用者(会社)が退職願を受理して承諾すると、労働契約が合意により終了します。

使用者が合意解約の申し込みを承諾したら従業員は解約の申し込みを撤回することはできません。

定年退職

定年や従業員の死亡の場合には労働契約が終了し、退職することになります。

定年を65歳未満に定めている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するための措置を行う必要があるため、定年後再雇用の取り扱いをされていることも多いでしょう。

休職期間満了による退職

休職期間満了による退職とは、休職中の従業員との雇用関係を休職期間満了という理由で終了させることをいいます。

就業規則で多くの会社が、病気やケガによる就労不能の場合に一定期間の休職制度を設定しています。

そして、休職期間満了までに復職が叶わない場合は雇用関係を終了する旨が就業規則に定められているでしょう。

 

休職期間満了の取り扱いによっては、従業員から「不当解雇である」と訴訟を起こされるケースもあり得るため、注意が必要です。

休職の理由が、長時間労働、セクハラ・パワハラなどによって精神疾患を原因としているようなケースでは休職期間満了による退職あるいは解雇を不当解雇と判断した裁判例もあります。

長時間労働、セクハラ・パワハラによる精神疾患の場合には、業務起因性が疑われることが多く、業務上の疾患との判断がなされれば、休職制度に基づく退職は不当解雇と判断される可能性が高くなります。

 

解雇の種類

解雇は退職とは異なり、使用者(会社)の一方的な意思表示による労働契約の解除のことをいいます。

解雇は会社が従業員の労働者としての立場を奪う処分のため、従業員サイドに及ぼす影響が大きいです。

 

使用者(会社)がいつでも自由に解雇できるわけではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は労働者を辞めさせることはできません。

社会の常識に照らして納得できるような理由が必要となります。

そのため、解雇の場合は次のような解雇してはいけない制限があります。

<労働基準法>

業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇
産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇
労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇

<労働組合法>

労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇

<男女雇用機会均等法>

労働者の性別を理由とする解雇
女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇

<育児・介護休業法>

労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、又は育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇

 

また、使用者(会社)は、就業規則に解雇事由を記載しておかなければなりません。
そして、合理的な理由があっても、解雇を行う際には少なくとも30日前に解雇の予告をする必要があります。
予告を行わない場合には、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。

予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金を、解雇予告手当として、支払う必要があります。

例えば、解雇日の10日前に予告した場合は、20日×平均賃金を支払う必要があります。(労働基準法第20条)。

 

解雇には「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」といった種類があります。

普通解雇

普通解雇は懲戒解雇以外の解雇のことをいいます。

整理解雇

整理解雇は普通解雇のうちで、会社の経済事情で人員整理をするためにおこなう解雇のことです。

懲戒解雇のように従業員に債務不履行などがなく、会社側の事情による解雇といえます。いわゆる「リストラ」は整理解雇のひとつです。

懲戒解雇

労働者が就業規則に定められた懲戒事由及びその手続きの規定がある場合に、それに基づき会社が労働者に対する懲戒処分としておこなう解雇のことをいいます。

 

整理解雇、懲戒解雇についてより詳しい解説は別の記事に譲ります。

整理解雇とは

懲戒解雇とは

 

退職と解雇における注意点

最後に退職と解雇における注意点について解説します。

一定の理由による解雇は法律上禁止されている

国籍や信条、妊娠などの理由による解雇は法律上禁止されているため、確認が必要です。

解雇や退職をする労働者に対する未払い賃金がないか確認する

退職金規定のある会社は支払額や支払日を確認する

不払いとなる事由や減額規定を確認しましょう。

助成金受給に支障を受けないか確認する

解雇や退職勧奨を不支給要件とする助成金があるため、あらかじめ確認しておきましょう。

解雇の場合は慎重に対応する

不当解雇として争われる可能性や、社会的相当性を逸脱すると不法行為となり、損害倍旧請求をされてしまうケースもあるため慎重な対応が必要です。

まとめ

貴重な人材がやむなく退職してしまうことは会社にとって大きな損失です。

一方で、問題のある従業員を雇用し続けることは会社にとって負担であり、リスクとなります。

解雇するという判断をせざるを得ない状況もあるでしょう。

 

しかし、就業規則との整合性を確認せずに懲戒解雇を断行してしまったりすると、後々で法的なトラブルを引き起こしてしまいかねません。

また、自己都合退職にもかかわらず、従業員によかれと会社都合退職として取り扱うことは事実を曲げることになり、会社が従業員を解雇したとして労務トラブルの火種となるだけではなく、助成金の支給制限を受けてしまい経営リスクにも跳ね返ってきます。

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