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【企業担当者向け】労働時間の考え方と労働時間の上限について解説!

⻑時間労働は、健康の確保を困難にするとともに、仕事と家庭⽣活の両⽴を困難にし、少⼦化の原因、⼥性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因となっています。

⻑時間労働を是正することによって、ワーク・ライフ・バランスが改善し、⼥性や⾼齢者も仕事に就きやすくなり労働参加率の向上に結びつきます。

このため、働き方改革の⼀環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されました。

ここでは、労働基準法における労働時間の定めについて解説していきます。

 

 労働時間の考え方

時間外労働や休日労働について確認するために、ここでは労働時間の考え方について解説していきます。

 

1. 法定労働時間

労働基準法に定められている労働時間の上限は、1日8時間及び1週40時間です。

これを「法定労働時間」といいます。

例えば、1日8時間・週5日勤務(週40時間)の会社で、1日だけ休日出勤をした場合は、8時間以内の勤務であったとしても、週40時間を超えることになるので、36協定の締結・届出が必要です。

ここでの週40時間の起算曜日は、就業規則に定めがない場合、日曜日となります。

 

2. 法定休日

休日は原則として、毎週少なくとも1回与えることとされています。

これを「法定休日」といいます。

例えば、1日8時間・週5日勤務(週40時間)の会社で、毎週土曜日・日曜日が休日であった場合は、日曜日が「法定休日」とすると、土曜日は「所定休日(法定外休日)」となります。

休日が週に2回ある場合、どちらが法定休日になるかは、就業規則の定めに寄ります。

 

3. 所定労働時間

会社は、就業規則や個別の雇用契約で労働時間を定めます。

これを「所定労働時間」といいます。(「所定労働時間」は「法定労働時間」を上回ることはできません。)

例えば、1日の所定労働時間が7時間の会社で、所定労働時間を超えて働いた場合、法定労働時間内であれば、36協定の締結・届出は不要です。

 

 

時間外・深夜労働や休日労働を行わせた場合の割増賃金について

使用者は、労働者に時間外労働、休日労働、深夜労働を行わせた場合には、労働基準法第37条等で定める割増率以上の率で算定した割増賃金を支払わなければなりません。

この労働基準法第37条の趣旨は、「使用者に割増賃金を支払わせることによって、時間外労働等を抑制し、もって労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに、労働者への補償を行おうとする」ことにあると、最高裁判決で示されています。(静岡県教職員事件)

 

実際の割増率は下記の通りです。

割増賃金率 法定時間外労働(60時間以下) 25%
法定時間外労働(60時間超) 50%
法定休日労働 35%
深夜労働 25%

 

大企業では、従来より上記の割増賃金率でしたが、中小企業では、2023年4月1日から、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が上記のように引き上げられました。

月60時間を超える法定時間外労働に対しては、企業規模に関わらず、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

 

労働時間、休憩、休日の制限を受けない管理監督者とは

「管理監督者」は労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません。

従って、法定時間外労働や法定休日労働という扱いはなく、割増賃金の支払いも不要です。

一方で、深夜割増賃金は支払わなければなりませんので、注意が必要です。

 

「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名に関係なく、下記のような基準を以って判断します。

  1. 経営者と一体的な立場にあり、経営上の決定権を有していること
  2. 労働時間の規制に関わらずに従事しなければならない重要な職務内容を有していること
  3. 一般従業員と比較して相応の待遇(給与、賞与、その他の待遇)を有していること

これらの基準を満たさない場合は、「部長」や「店長」など、会社が管理職として位置付けていても、労働基準法上の「管理監督者」には当てはまらない場合があります。

これまでも、会社が管理職の従業員に対して、「管理監督者」であるとして割増賃金を支払っていなかったことが原因となり、裁判となった事例がいくつもあります。ここでは管理監督者性が認められなかった裁判例を紹介します。

 

【日本マクドナルド事件(平成20年1月28日東京地判)】

〈概要〉

  1. ハンバーガー販売会社であるY社は、店長以上の職位の従業員を「管理監督者」として扱っていた。
  2. 直営店の店長であるXは、アルバイト従業員の採用、時給額、勤務シフト等の決定を含む労務管理や店舗管理を行い、自己の勤務スケジュールも決定している立場にあった。
  3. Xは、「管理監督者」には該当しないとしてY社に対して過去2年分の割増賃金の支払等を求め、提訴した。
  4.  東京地裁は、管理監督者に当たるとは認められないと判示した。

〈判断要素〉

  1. Xは店舗の責任者として、店舗運営において重要な職責を負っていることは明らかであるものの、営業時間、商品の種類と価格、仕入れ先などについては本社の方針に従わなければならず、企業全体の経営方針へも関与していないこと
  2. Xは交代勤務に組み込まれて、時間外労働が月100時間を超える場合がある程の長時間の時間外労働を余儀なくされるのであるから、勤務実態からすると、労働時間に関する自由裁量性があったとは認められないこと
  3. Xの賃金は、店長の下位の職位の平均年収と比較しても、管理監督者に対する待遇としては十分とはいえないこと

 

勤務間インターバル制度

勤務間インターバル制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するものです。

労働者が日々働くにあたり、必ず一定の休息時間を取れるようにするというこの考え方に関心が高まっています。

 

勤務間インターバル制度を導入することによって、下記のようなメリットが期待されます。

1. 従業員の健康維持

インターバル時間が短くなると、合わせて睡眠時間も短くなります。

十分な睡眠時間が確保できないと、ストレスや疲労感の蓄積、集中力・注意力の低下にも繋がります。

勤務間インターバル制度は、これらのリスクを予防するためにも効果的です。

また、長時間労働による心血菅疾患、精神疾患の発症リスクを抑えることにもつながり、過労死防止策としても有効です。

2. 優秀な従業員の定着

優秀な人材の確保・定着は、労働力人口が減少するなかでは特に重要な課題です。

前述の健康維持や、十分な休息時間の確保等により、ワーク・ライフ・バランスの充実を図ることで、職場環境の改善と魅力ある職場づくりを実現できます。

その結果、人材の確保・定着、離職率の低下にも繋がります。

3. 生産性の向上

十分なインターバル時間の確保は、仕事とプライベートのメリハリをつけることができ、仕事への集中力が高まり、生産性の向上にも繋がります。

また、ストレスや疲労感を抑制することで、従業員間のコミュニケーション向上にも繋がることが期待できます。

 

まとめ

  • 時間外労働や休日労働をさせるには、36協定の締結・届出を行う必要がある。
  • 法定労働時間や法定休日について正しい認識を持ち、割増賃金を支払うこと。
  • 令和5年4月1日より、60時間以上の法定時間外労働の割増率が引き上げられる。
  • 肩書や役職名だけで管理監督者と判断しないこと。
  • 勤務間インターバル制度の導入など、十分な休息時間の確保に努めること。

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