ご親族の介護を理由とする離職者数について、調査機関によって多少の幅はあるものの、近年では毎年約10万人を推移しており、これは2000年代のほぼ2倍の数字と言えます。
高齢者人口の増加とともに、介護保険制度上の要支援・要介護認定者数は増加しており、いわゆる団塊の世代が後期高齢者の年齢層に突入したことを考えますと、その傾向は続くことが見込まれます。
また、介護を家庭内で行う方は、働き盛り世代で、企業の中核を担う方であることが多く、企業において管理職として活躍する方や職責の重い仕事に従事する方も少なくありません。
この介護離職という、人員確保を困難にする潜在的リスクに対応するために、企業が行うべきことをまとめましたので、貴社の継続的な発展の一助としてご利用いただけましたら幸いです。
目次
法令によって義務化された制度
育児・介護休業法により、企業は以下の制度の実施が義務化されております。
なお、介護の必要性に直面した従業員・40歳に到達した従業員にこれらの情報提供をすることも義務化されておりますので、人事のご担当者の皆様はお忘れなきようご対応をお願いします。
なお、勤続年数や雇用契約の内容、または職務内容によって、制度の対象外となる場合がありますので、制度のご利用を希望される従業員の皆様は、まずはご自身が対象となるかご確認されることをお勧めいたします。
介護休業
2週間以上の期間にわたり常時介護を必要する状態(以下要介護状態)にあるご家族を介護する従業員の求めに対して、企業は対象のご家族1人につき3回まで、通算93日まで休業させなければなりません。
その間は雇用保険の介護休業給付の対象となり、休業前の給与の約67%相当の給付金が支給されます。
介護休暇
要介護状態にあるご家族を介護する従業員の求めに対して、企業は休暇(対象家族が1人の場合は年間5日まで、2人以上の場合は年間10日まで)を与えなければなりません。
この休暇は、1日単位または1時間単位での取得が可能です。介護休暇の場合、介護休業とは異なり、給付金等はございませんのでご注意くださいませ。
労働時間の短縮の措置等
要介護状態にあるご家族を介護する従業員の求めに対して、企業は以下の措置を取る必要があります。
- 所定労働時間外労働の制限
- 法定労働時間外労働の制限
- 深夜労働の制限
- 所定労働時間の短縮
介護離職防止のための雇用環境整備
(1)~(3)の制度が円滑に実施されるため、企業は以下のいずれかの措置を講じる必要があります。
- 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
- 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
- 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
- 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
テレワークの導入
要介護状態にあるご家族を介護する従業員の求めに対して、企業はテレワークを選択できるように措置を講じる必要があります。
※本制度は(1)~(4)と異なり、努力義務として設定されておりますので、貴社の実態に合わせて導入・運用をお願いします。
その他の制度
介護支援プランの策定・運用
介護に直面した従業員の状況・希望を踏まえて、仕事と介護が両立できる働き方を支援するためのプランを策定することで、介護離職の防止を図ります。
本プランの作成につきましては、厚生労働省より委託を受けた企業が無料でサポートしておりますので、ご興味がある方は一度ご相談されても良いかと思います。
介護支援プラン導入 無料支援受付中|中小企業育児・介護休業等推進支援 厚生労働省
また、本プランを導入し、それに基づいて介護に係る諸制度を利用された従業員がいる場合、両立支援助成金を受給できる可能性がありますので、こちらも併せてご検討くださいませ。
地域包括支援センターの利用の推進
地域包括支援センターとは、地域の高齢者を支えるための総合相談窓口として、
全国の市町村に設置されている施設で、介護に関する相談も無料で受け付けております。
従業員の皆様が抱く介護に関するお悩みにつきましては、専門知識のない人事のご担当者もなかなか踏み込んでアドバイスをするのは難しいと思います。
地域包括支援センターでは、ケアマネをはじめとする介護の専門家からの助言・指導を受けることができますので、お悩みの方に窓口を案内されることをお勧めします。
介護保険の利用の推進
介護保険とは、40歳以上の方が対象の制度で、要介護状態(40歳~64歳の方については、特定疾病が原因である場合に限定)であると認定された方に対して、介護サービスの7割~9割を給付するものです。
給付対象のサービスは、訪問介護・通所介護・デイケア特別養護老人ホームその他多岐にわたります。
従業員ご自身による継続的な介護については、身体的・精神的な負担も大きく、そのため長期の休業・離職の原因にもなります。
本制度について案内し、各種介護サービスの利用を推進することで従業員の負担を減らし、介護離職の防止を図ることができます。
本制度についてのご相談は、市町村役場の他、地域包括支援センターでも受け付けております。
まとめ
2025年の育児・介護休業法の改正によって介護休暇の対象が広がりましたが、今後も介護の必要性がある方の増加に伴い、諸制度の改定があるかと思います。
その際は改めて弊社ホームページにて記事を載せますので、定期的にチェックしていただけましたら幸いです。