普段なにげなく「月給」「日給」「時給」という言葉を耳にし、使用されている方も多いかと思います。
しかし実は、給与形態にも様々な種類、違いがあります。
企業の実態に合わせた給与形態を採用することで、労働者にとっても柔軟な働き方ができるととともに、生産性の向上や人件費管理のしやすさなどメリットが多くあります。
本記事では特に混同されやすい日給月給制と(完全)月給制、そして月給日給制の三つの給与形態に焦点を当て、それぞれの仕組み、計算方法、メリット、デメリットについて詳しく解説します。
目次
日給月給制とは
日給月給制とは、月給を定め、欠勤・遅刻・早退をした場合にその日数分・時間分だけの賃金を差し引くという形の賃金形態となります。
控除される賃金は基本給のほかに、役職手当や資格手当などの固定的に支払われている手当も含まれます。
ノーワーク・ノーペイの原則(民法624条・労働基準法24条)にあるように、「働いた分を支払い、働いていない分は支払わない」という方法になります。
(完全)月給制とは
ではそもそもの(完全)月給制とはどのような賃金形態でしょうか。
一般的な定義としては、1か月の所定労働時間に対して賃金額が決められているものを指します。暦日による変動もありませんので、受け取れる賃金が一定になります。
日給月給制との大きな違いは、欠勤・遅刻・早退をした場合であっても、その分の控除がなく、賃金が変わらないというところです。
そのため、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けない管理監督者に用いられることの多い給与形態となっております。
管理監督者については、ぜひ合わせてこちらの記事をご参照下さい。
月給日給制とは
月給日給制とは、先に出てきた「日給月給制」と同様にあらかじめ定額の月給を決め、欠勤・遅刻・早退をした場合にその日数分だけの賃金を差し引く賃金形態となっています。
日給月給制と月給日給制の違い
月給日給制も日給月給制も、「月単位で給与が固定されているが、休めばその分が差し引かれる(ノーワーク・ノーペイの原則)」という点では共通していますが、控除対象が異なることに留意しましょう。
日給月給制:基本給に加えて、固定的に支払われている手当も控除の対象に含まれます
月給日給制:控除対象になるものが多くは「基本給」のみであることです。
月単位で支給される諸手当等については日割計算で控除せず、満額支給されます。
たとえば同じ金額の基本給、諸手当で同じ欠勤日数だった場合、月給日給制の方が、日給月給制に比べて控除額が少なく、支払われる賃金が多くなる傾向があります。
日給月給制の給与計算例
では、日給月給制で実際に欠勤があった場合、どのような計算になるのか具体例を示していきます。
計算方法としては月給全体を所定労働日数で割って1日あたりの賃金単価を算出し、欠勤日数分を控除するのが一般的です 。
| 〈給与例〉 
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上記の条件で働いている従業員が、月に4日欠勤した場合で考えてみましょう。
- 1日の給与単価の算出
250,000円÷平均所定日数20日=12,500円
- 欠勤控除金額の算出
12,500円/日×欠勤4日=5万円
- 当月の支給額
250,000-50,000=200,000円
実際の給与計算では、上記の支給額に、時間外労働分の割増賃金や社会保険料・住民税の控除額が加わったものが支給金額となります。
日給月給制のメリット・デメリットは?
多くの企業で採用されている日給月給制には、企業側と従業員側の双方にメリットとデメリットが存在します 。
日給月給制のメリット
メリットは下記の5点です。
従業員の生活安定
欠勤・遅刻・早退がなければ給与額は固定されるため、決まった給与を受け取ることができ、安定した生活設計が立てやすくなります 。
これは従業員のモチベーション維持や離職率の低下にも貢献します 。
不要な勤怠不良の抑制
会社としては「働かなかった分は支給しない」という原則を適用することで、従業員の不要な欠勤・遅刻・早退の抑止につながります 。
人件費コストの適正化
働かなかった分を支給しないため、余計なコストをカットし、人件費の管理がしやすくなります 。
評価との連動性
欠勤早退などを含めた勤務態度やスキルといった人事評価との連動がしやすいという特徴があります 。
給与計算の簡略化
月給制は月の所定日数と関係なく賃金を支払う仕組みであるため、時給制や日給制に比べると給与計算・勤怠管理の仕組みの簡略化にもつながります 。
日給月給のデメリット
デメリットは下記の3点です。
長期欠勤時の収入減
従業員側から見ると、長期にわたり欠勤した場合、給与が大きく減額となるため、有給休暇を使用するなど工夫が必要になります 。
労働単価の不公平感
月によって賃金が一定であるため、所定労働日数が多い月で多く働いたとしても、給与額は変わりません 。
これにより、従業員間で労働単価に対する不公平感が生じる可能性があります。
トラブルのリスク
会社側は、給与の運用ルール、控除に関する対象項目や計算方法を明確にしておかないと、完全月給制に比べて給与の支払いミスや従業員とのトラブルにつながりかねません 。
割増賃金(残業代)の支払い義務
日給月給制、(完全)月給制、月給日給制のいずれの給与形態であっても、時間外労働や深夜労働が発生した場合には、法律に基づいた割増賃金の支払いが必要になります 。
また、会社が定める所定労働時間を超える所定外労働についても、賃金の支払いが必要です 。
割増賃金の計算は、基本的には「割増賃金の基礎となる賃金(月給から一部手当を除外したもの)を、1か月平均所定労働時間で割って時間単価を算出し、それに割増率をかけて残業時間を乗じる」という方法で行われます。
給与形態によって、欠勤控除の対象となる手当が異なっても、割増賃金の基礎となる賃金に含めるか除外するかのルールは労働基準法で定められています。
さいごに
賃金形態は企業の経営と従業員の生活に直結する重要な要素です 。
特に月給制と呼ばれるものの中には、日給月給制、月給日給制、(完全)月給制という違いがあり、欠勤時の賃金控除の仕組みがそれぞれ異なります 。
トラブルを回避し、人件費の適正化を図るためにも、企業は以下の点を徹底する必要があります。
- 就業規則への明記と周知:賃金の支払いについては、就業規則に明確に記載し、従業員への周知を行うことが不可欠です 。
- 計算方法の明確化:控除の仕組みや端数処理など、給与計算方法についても明確にしておくことが重要です 。
最低賃金の上昇など、人件費にかかるコストは年々増えているため 、企業の賃金規定や就業規則を定期的に見直し、適正な運用をはかっていくことが求められます 。
賃金規定を含めた就業規則についてもご相談・お見積もりは無料ですので、「社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ」へお気軽にお問い合わせください。
