従業員が産前産後休業や育児休業を取得する際、健康保険と厚生年金保険の社会保険料が全額免除されることをご存じでしょうか。
この制度は、従業員だけでなく会社(事業主)が負担する分も含まれ、双方にとって大きなメリットがあります。
従業員にとっては、休業中の収入減による経済的負担が軽減される上、将来受け取れる年金額が減る心配もありません。
会社側も、人件費のコストを抑えながら、従業員が安心して子育てと仕事の両立ができるようサポートできます。
この記事では、産休・育休中の社会保険料免除の対象期間や手続き方法、賞与にかかる保険料免除の注意点などを詳しく解説します。
制度を正しく理解し、従業員と会社双方にとってメリットのある運用を目指しましょう。
目次
産休・育休中の社会保険料について
従業員が産前産後休業、育児休業を取得した際、社会保険料が免除される場合があります。
社会保険料免除制度の対象となるのは、健康保険と厚生年金保険の保険料で、従業員本人(被保険者)だけでなく、会社(事業主)が負担する分も全額免除されます。
従業員のメリット:休業中は収入がないことがほとんどのため、従業員様の経済的負担が軽減されます。
免除されている期間は保険料の負担はありませんが、保険料を支払ったものとして扱われるため、将来受け取れる年金額が減ることはありません。
また、健康保険の給付(傷病手当金等)も通常通り受け取ることができます。
会社側のメリット
会社負担分も免除されるため、従業員が産前産後休業・育児休業を取得している際の人件費のコスト軽減に繋がります。
社会保険料の免除期間について
産前産後休業中の社会保険料免除
対象期間:産前42日(多胎妊娠は98日)、産後56日のうち、労務に従事しなかった期間
免除期間:休業を開始した日の属する月から、休業が終了する日の翌日が含まれる月の前月まで
例1)出産予定日が8月20日で、予定日通り8月20日に生まれた場合
産前休業:7月10日~8月20日
産後休業:8月21日~10月15日
7月分(休業を開始した日の属する月)から9月分(終了日の翌日が含まれる月の前月)の3か月分の社会保険料が免除されます。
例2)出産予定日は8月20日だが、予定より早く8月1日に生まれた場合
産前休業:7月10日~8月20日
産後休業:8月2日~9月26日
7月分(休業を開始した日の属する月)から8月分(終了日の翌日が含まれる月の前月)の2か月分の社会保険料が免除されます。
産前産後休暇は出産予定日を基準にしますが、出産日によって産後休暇は変更となります。出産日が早まると社会保険料の免除期間も短くなってしまうため、注意が必要です。
育児休業中の社会保険料免除
- 月末時点で育児休業を取得している場合
育児休業を開始した日の属する月から、育児休業終了日の翌日が属する月の前月までが免除されます。
例)10月16日~3月31日まで育児休業の場合
10月分(休業を開始した日の属する月)から翌年3月分(終了日の翌日4/1が属する月の前月)まで社会保険料が免除されます。
- 同一月内に14日以上の育児休業を取得した場合
月の途中で育児休業が開始・終了した場合でも、その月内で14日以上(土日祝日含む)の育児休業を取得すれば、その月の社会保険料が免除されます。
例)10月16日~10月30日まで育児休業の場合(15日間休業)
育児休業が14日以上あるため、10月分の社会保険料が免除されます。
社会保険料免除のための手続き内容について
産前産後休業に伴う手続き
提出書類:健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申出書
提出先:管轄の年金事務所
提出期限:産前産後休業期間中、または休業終了日から1ヶ月以内
注意点:出産予定日と実際の出産日がずれた場合、「変更(終了)届」の提出が必要になります。出産日前に申出書を提出すると、出産日がずれた場合に再度手続きが必要になるため、出産後に提出することで、手続きが簡略されます。
育児休業に伴う手続き
提出書類:健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書
提出先:管轄の年金事務所
提出期限: 育児休業期間中または休業終了日から1ヶ月以内
注意点:育児休業を延長する場合、延長のたびに再度申出書を提出する必要があります。育児休業の延長でよくある理由が保育園の入所待ちですが、その都度申請が必要となるため、注意が必要です。
賞与が支給される際の手続き
下記の条件を満たせば、賞与にかかる社会保険料が免除されます。
- 1ヶ月を超える休業を取得していること
- 休業期間の中に賞与を支払った月の月末が含まれていること
例1)育児休業期間:6月1日~6月30日(ちょうど1ヶ月)
賞与支給日:6月20日
育児休業期間が1ヶ月ちょうどのため、社会保険料は免除されません。(①を満たしていないため)
例2)育児休業期間:6月15日~7月16日(1ヶ月と1日)
賞与支給日:6月20日
賞与月の末日(6月30日)を含み、かつ、1ヶ月を超える育児休業であるため、社会保険料は免除されます。
例3)産前産後休業:2025年7月10日〜10月15日(3か月と5日)
賞与支給日:2025年8月20日
賞与支給月の末日(8月31日)が産前産後休業期間に含まれているため、この期間中は社会保険料が免除されているため賞与にかかる社会保険料も免除されます。
注意点
社会保険料免除の対象となるのは健康保険と厚生年金になります。
雇用保険の育児休業給付金は、社会保険料免除とは異なる手続きが必要です。
制度を混同してしまうと、申請漏れや手続きの遅れにつながる可能性があるため、それぞれの制度の違いをしっかり理解し、必要な手続きを正しく行うことが大切です。
まとめ
産前産後休業や育児休業中の社会保険料免除制度は、従業員の子育てと仕事の両立を支える大切な仕組みです。
休業中の保険料が免除されることで、収入が減る時期の負担が軽くなり、安心して育児に専念できます。
また、会社にとっても人件費の負担が減るため、従業員のライフイベントを支援しながら経営面でもメリットがあります。
制度の対象や免除期間、手続きのタイミングなど、細かなルールはありますが、正しく理解して活用すれば、従業員と企業の双方にとって、心強い支えとなります。
育児休業の延長や賞与支給時など、状況に応じた対応も必要になるため、制度の内容を定期的に確認し、スムーズな運用を心がけましょう。
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