個人事業主から法人化する場合、従たる事務所の設立時、会社所在地を移転する場合に必要な手続きとは

個人事業主として経営が軌道にのっていくと、個人事業から法人化を考えるケースがあったり、法人化後に従たる事務所を設立したり、主たる事務所の移転など直面するケースがあるかと思います。

そこで今回は以下のケースがあった場合に必要な社会保険の手続きについて解説していきます。

  1. 個人事業主から法人化する場合
  2. 従たる事務所を設立する場合
  3. 会社所在地を移転する場合

※本記事では概要をおさえていただくことを目的としているため、細かい部分や必要な添付書類も割愛しております

 

個人事業主から法人化した場合に必要な社会保険手続きとは

個人事業主が法人化することで、会社を設立したら、以下の社会保険への加入が義務付けられています。

まずは社会保険(健康保険・厚生年金保険)ですが、法人化にあたっては以下の手続きが必要です。

 

  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届 社会保険を適用させるために必要な書類
  • 健康保険・厚生年金被保険者資格取得届 従業員を社会保険に加入させるために必要な書類

 

手続名 提出先 いつまで
健康保険・厚生年金保険新規適用届 会社所在地を管轄する年金事務所

OR

広域事務センター

会社設立から5日以内
健康保険・厚生年金被保険者資格取得届 従業員を使用した日から5日以内

特に、健康保険・厚生年金被保険者資格取得届を行っていないと、従業員への保険証が発行されないため要件に該当する従業員がいたらスピーディーに手続きしましょう。

 

次に労働保険(労災・雇用)ですが、法人化にともない職員を雇用した場合は以下の手続きが必要です。

  • 労働保険保険関係成立届         労災保険を適用させるために必要な書類
  • 労働保険概算保険料申告書         労働保険(労災・雇用保険)の保険料を納めるために必要な書類
  • 雇用保険適用事業所設置届         雇用保険を適用させるために必要な書類
  • 雇用保険被保険者資格取得届 従業員を雇用保険に加入させるために必要な書類

 

手続名 提出先 いつまで
労働保険保険関係成立届 会社の所在地を管轄する

労働基準監督署

従業員を雇用した日の翌日

から10日以内

労働保険概算保険料申告書 従業員を雇用した日の翌日

から50日以内

雇用保険適用事業所設置届 会社の所在地を管轄する

公共職業安定所(ハローワーク)

従業員を雇用した日の翌日

から10日以内

雇用保険被保険者資格取得届 従業員を雇用した月の

翌月10日以内

※※社会保険と異なり個人事業主から法人化したとしても、代表者1人の場合や役員しかいないといった会社の場合は、上記の手続きは不要となります。

以上のとおり、個人事業主から法人化にともない従業員を雇用した場合には上記手続きが必要なります。

従たる事務所を設立する場合の社会保険手続とは

従たる事務所を設置する場合の社会保険手続については、上記で解説した個人事業主から法人化する場合の手続きと基本的には同じ考えかたとなりますので、各手続きについてはは割愛させていただきます。

従たる事務所を設立し、従たる事務所についても社会保険の適用をうけるとおのずと社会保険の手続きを主たる事務所と従たる事務所で管理をしないといけないため、管理が煩雑になってしまいます。

そこで、一定要件のもと主たる事務所で一括して処理ができるような方法もありますので、以下ではその考えかたと方法について解説します。

 

まずは社会保険の新規適用届ですが、当該従たる事務所に人事管理や経理などを独立性がなく本社のような主たる事務所がそれらの業務を行なっている場合においては、そもそも適用事業とならないため新規適用届の提出は不要となります。

また一旦、新規適用届を提出したが後日上記のような事情になった場合は主たる事務所の所在地を管轄する年金事務所に「一括適用申請書」を提出すれば、以後主たる事業所で社会保険の手続きを一括管理することが可能となります。

 

ただし、一括適用の承認を受けるためには、要件があり次のすべての基準を満たす必要があります。

  1. 一つの適用事業所にしようとする複数の事業所に使用されるすべての者の人事、労務及び給与に関する事務が電子計算組織により集中的に管理されており、適用事業所の事業主が行うべき事務が所定の期間内に適正に行われること。
  2. 一括適用の承認により指定を受けようとする事業所において、上記(1)の管理が行われており、かつ、当該事業所が一括適用の承認申請を行う事業主の主たる事業所であること。
  3. 承認申請にかかる適用事業所について健康保険の保険者が同一であること。
  4. 協会けんぽ管掌の健康保険の適用となる場合は、健康保険の一括適用の承認申請も合わせて行うこと。
  5. 一括適用の承認によって厚生年金保険事業及び健康保険事業の運営が著しく阻害されないこと。

次に労働保険の労災保険保険関係成立届と労働保険概算保険料申告書ですが、当該届出は労働者が一人でも従たる事務所で業務を行っている限りは原則届出が必要となります。

しかし、「労働保険の継続事業の一括」という手続きをすることで当該従たる事務所は主たる事務所に吸収され一つの保険関係とすることができ、労働保険料の申告と納付を一括した主たる事務所で行うことが認められています。

ただし、労災申請の手続き(療養補償給付や休業補償給付など)については一括したとしても、当該従たる事業所を管轄する労働基準監督署へ行う必要がございますので注意が必要です。

 

そして、雇用保険適用事業所設置届ですが当該従たる事務所に雇用保険の適用対象者となる従業員がいれば届出が必要となります。

ただし一旦、適用事業所となった場合においても当該従たる事務所が人事・経理上の指揮・監督等において独立していない場合であって、雇用保険に関する事務処理能力がない場合等は、主たる事業所に包括して届け出ることができます。

これを事業所非該当承認といいます。

 

非該当承認申請手続きを非該当とする従たる事務所を管轄する公共職業安定所(ハロワーク)に提出し、承認を得ることで雇用保険の手続きを主たる事務所で管理することが可能となります。

ただし、この非該当承認手続きは上記の継続事業の一括と比較して、より厳しく要件を審査されますので承認が下りないケースもございます。

※継続事業の一括の判断は労働局、非該当承認の判断は公共職業安定所(ハロワーク)が行います。

 

会社所在地を移転する場合の社会保険手続とは

会社所在地を移転する場合の社会保険手続については、所在地という要素が変われば管轄の年金事務所や労働基準監督署、公共職業安定所(ハローワーク)の変更となりますので、各役所に所在地変更の書類を提出する必要があります。

 

まず、社会保険(健康保険・厚生年金保険)ですが、会社所在地を変更した場合は以下の手続きが必要です。

◆健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 会社所在地を変更したことを届出する書類

 

また、以下のようにこれまでの年金事務所の「管轄内の所在地変更」か「管轄外の所在地変更」かによって提出先が変わってきますので注意が必要です。

手続名 管轄 提出先 いつまで
健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 管轄内 変更後の会社所在地を

管轄する年金事務所

所在地変更から5日以内
管轄外 変更前の会社所在地を

管轄する年金事務所

 

 

次に労働保険(労災保険・雇用保険)ですが、会社所在地を変更した場合は以下の手続きが必要です。

  • 労働保険名称、所在地等変更届 会社所在地を変更したことを届出する書類
  • 雇用保険事業主事業所各種変更届 会社所在地を変更したことを届出する書類

 

手続名 提出先 いつまで
労働保険名称、所在地等変更届 会社の所在地を管轄する

労働基準監督署

所在地変更した日の翌日から

起算して10日以内

雇用保険事業主事業所各種変更届 会社の所在地を管轄する

公共職業安定所(ハローワーク)

 

上記のとおり、会社所在地の変更といっても年金事務所、労働基準監督署、公共職業安定所といった各役所に届出が必要となりますので、手間がかかることがわかっていただけるでしょう。

最後に

以上、「個人事業主から法人化する場合、従たる事務所の設立時、会社所在地を移転する場合に必要な手続きとは」というタイトルで解説してきました。

馴染みのない用語も多く一見煩雑ですが、どの手続きも労務的には重要なため不明点があれば各役所から手引きが出ているため、当該手引きを参照してみましょう。

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