特定健診について該当する業務や実施項目について解説!

多くの方は1年に1回、健診を受けていると思います。

これは、『事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければならない。

また、労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければならない。』と定められているからです。

ここまで読んで、「私は半年に一度健診を受けている」という方もいるかもしれません。

では、なぜ、多くの人と同様、1年に1回ではなく、半年に1回なのでしょうか。

 

それは、深夜業や有害物質を扱う業務など、特定の業務に携わっているからです。

それでは、特定の業務とはどのような業務をいうのでしょうか。

下記に列挙します。

 

特定の業務とは

  • 坑内における業務
  • 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  • 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  • ラジウム放射線、エックス線、その他の有害放射線にさらされる業務
  • 鉛、水銀、クロム、砒素、黄リン等その他これらに準ずる有害物のガス、蒸気または粉塵を発散する場所における業務
  • 異常気圧化における業務
  • 深夜業を含む業務※1
  • 水銀、砒素、黄リンその他これらに準ずる有害物質を取り扱う業務
  • 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
  • 身体に著しい振動を与える業務
  • 重量物を取り扱い等重激な業務※2
  • 強烈な騒音を発する場所における業務(85dB以上の騒音が発生する場所) 等

※1・・・深夜業:午後10時から午前5時までの勤務を常態的(週に1回以上、または1か月に4回以上)に行う労働者のことを指す。所定労働時間の一部が午後10時から午前5時までの時間に重なる労働者も特定業務従事者に該当する。

※2・・・重量物:30㎏以上の重量物を労働時間の30%以上、20㎏以上の重量物を労働時間の50%以上取り扱う業務が該当する

 

上記のような業務が特定の業務になります。

では、特定業務に従事している方の健康診断はどんな検査項目なのでしょうか。

 

特定業務従事者の健康診断とは?

特定業務従事者健康診断は、リスクある環境下で業務を行う労働者の健康を守るために行われるものです。

検査項目は、通常の健康診断(定期健康診断)と同じです。

異なる点を挙げますと、実施される頻度のみとなります。

冒頭にも記載しましたが、通常の健康診断は1年に1回定期的に実施されます。

対して、特定業務従事者の健康診断は、『特定業務に従事する労働者に対し、当該業務への配置換えの際及び6か月ごとに1回定期に、定期健康診断の項目について、医師による健康診断を行わなければならない』と定められています。

検査項目は下記の通りです。

  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査及び喀痰検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査
  7. 肝機能検査
  8. 血中脂質検査
  9. 血糖検査
  10. 尿検査
  11. 心電図検査

 

上記①~⑪のうち、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認める(自覚症状や他覚症状、既往歴などから医師が総合的に判断するもので、機械的に判断するものではない)ときは、省略することができます。

①身長(20歳以上の者)

③腹囲(40歳未満の者(35歳除く)、妊娠中の女性で腹囲が内臓脂肪の蓄積でないと診断された者、BMIが20未満である者、自ら腹囲を測定し、その値を申告した者(BMI22未満の者に限る)

④胸部X線(40歳未満の者(20歳、25歳、30歳及び35歳の者を除く)で次のいずれにも該当しないもの:感染症法で結核にかかわる定期健康診断の対象とされている施設(学校、病院、診療所等)で働いている者、じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている者)

④喀痰検査(胸部エックス線検査を省略された者、胸部エックス線検査によって病変の発見されない者または胸部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者)

⑥、⑦、⑧、⑨、⑪の検査(35歳未満の者、及び36~39歳の者)

続いて、特殊健康診断についてです。

 

特殊健診について

特殊健康診断は一般的な健康診断とは異なり、特定の職種や作業内容に従事する労働者が受けるものになります。

労働者の安全と健康を守るため、職場での危険因子や有害物質への露出を評価し、そのリスクを管理することを目的としています。

 

特殊健康診断とは、一定の有害な業務に従事する労働者に対して、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行わなければならないとされている健康診断で、仮に、それらの業務に従事させなくなった場合でも、現に雇用している期間は定期的に健康診断を実施しなければなりません。

法的義務でもありますので、事業者は法規制に則った形で従業員を適切に管理することが重要です。

因みに、実施しない場合は労働基準監督署からの指導が入ります。

その後、適切な処置を行わないまま放置すれば、50万円以下の罰金が課せられます。

 

検査項目は有害業務ごとに決まっており、職業特有の健康リスクに対応した各種検査項目が含まれます。

有害化学物質の取り扱いがある労働者の場合、血液や尿の生化学的検査を通じて化学物質の体内蓄積度を測定することがあります。

代表的な有害業務や実施頻度は以下の通りです。

 

有害な業務と実施頻度、検査項目

有害業務 実施頻度(原則) 特殊な検査項目
①四アルキル鉛等業務のうち一定のもの 6か月以内ごとに1回 いらいらや不眠、悪夢など精神症状の有無の検査、血圧測定、血色素量、血比重の検査、尿検査
②高圧室内業務・潜水業務 既往歴、高気圧業務歴の調査、自覚症状や他覚症状の有無の検査、運動機能検査、聴力検査、血圧測定、肺活量測定
③石綿の粉塵を発散する場所における業務 業務歴の調査、石綿による咳・痰・息切れ等の既往歴の有無の検査・他覚症状・自覚症状の有無、胸部X線検査、
④有機溶剤のうち一定のものを製造し、又は取り扱う業務 業務経歴、有機溶剤による健康障害の既往歴の調査、有機溶剤による自覚症状、他覚症状の調査、尿検査、肝機能検査、貧血検査、眼底検査
⑤放射線業務 6か月(緊急作業に係る業務については、1か月)以内ごとに1回 被ばく歴の有無の検査、血液検査(白血球数・白血球百分率、赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値の検査)、白内障に関する眼検査、皮膚の検査
⑥特定化学物質のうち一定のものを製造し、又は取り扱う業務 6か月(一定の項目は1年)以内ごとに1回 例:ベンジン⇒血尿、頻尿の有無など

塩化ビニル⇒肝臓・脾臓における腫大など、腹部検査

⑦鉛業務のうち一定のもの 業務歴の調査、食欲不振、便秘、易疲労感等の自覚症状、他覚症状の検査、血液中の鉛の検査等
⑧じん肺健診 管理区分に応じて就業時、定期(1~3年以内ごとに1回)、離職時 粉じん作業職歴の調査、胸部エックス線検査、肺機能検査

※特定化学物質の健康診断では、それぞれの化学物質の性質や有害性に応じて検査項目が異なります。

詳しくは、下記のURLをご参照ください。(令和2年7月1日施行)

化学物質取り扱いの事業者の皆様、健康診断機関・医療機関の皆様へ

 

有害業務従事中の特殊健康診断のうち、石綿、一定の特定化学物質(ベンジジン、ジクロルベンジジン等)の製造など、発がん性物質にかかる業務については、健康障害の発現までの潜伏期間が長く、有害業務を離れてから表面化するおそれもあるため、他の業務に配置替え後についても、現に使用している間は、引き続き特別の項目についての健康診断を行うこととされています。

 

<実施頻度の緩和>

上記の①、④、⑥、⑦の実施頻度について、令和5年4月1日施行された実施頻度の緩和により、以下の基準を満たした場合は実施頻度を1年以内ごとに1回と緩和することができます。

この緩和は令和5年4月1日後の直近の健康診断日以降に以下の基準をすべて満たした時点で、事業者が労働者ごとに判断して実施することになっています。

  1. 当該労働者が作業する単位作業場における直近3回の作業環境測定結果が第一管理区分に区分されたこと(四アルキル鉛を除く)
  2. 直近3回の健康診断において、当該労働者に新たな異常所見がないこと
  3. 直近の健康診断実施日から暴露の程度に大きな影響を与えるような作業内容の変更がないこと

 

歯科医師による健康診断

塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、フッ化水素、黄リンその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気、粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者に対し、定期的に歯科医師による健康診断を実施するように定められています。

検査項目は一般的な歯科健診とは異なり、歯と支持組織の異常の有無の検査となります。

実施頻度は、定期(6か月以内ごとに1回)の他、雇い入れ時、当該業務への配置替え時となります。

 

特殊健康診断結果の保管

一般健康診断同様、健康診断結果の保管期間は「5年間」と定められています。

ただし、有害要因の中にはがんを発生させるものもあり、暴露開始から発病まで数十年かかるものもあるため、健診によって、7年~40年と長期期間の保管が必要なものもあります。

原則、保管期間は書面または、コンピュータに備え付けられたファイル、磁気ディスクを持って保存しなければなりません。

下記は7年以上の保管が必要な業務になります。

  • じん肺(7年)
  • 放射線業務健康診断(30年)
  • 特定化学物質の一部(30年)
  • 石綿(40年)

 

労働者に健康被害が生じた場合

労働者への対応としては、労働者の負担軽減のため、就業場所の変更や作業内容の転換などの措置を取りましょう。

また、作業環境が適切だったかの確認をするためにも、作業環境測定も必要です。

上記に加えて、健康被害が生じた労働者と同じ作業場で働いている労働者の健康状態や、作業環境管理・作業内容も見直す必要があります。

 

特殊健診等、何かご不明点がございましたら、お気軽に社会保険労務士法人ベスト・パートナーズにご連絡くだされば幸いです。

 

 

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