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短時間労働者の社会保険はさらなる法改正へ
令和6年10月より短時間労働者の加入要件が拡大され、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者は、健康保険・厚生年金保険の加入対象となったことは記憶に新しいことと存じます。
被保険者数が51名以上の事業所に所属しており、なおかつ下記のすべてに該当する方は、社会保険に加入することが義務付けられました。
- 被保険者数が51名以上の事業所
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 2カ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
逆を言えば、上記の項目に一つでも該当しなければ社会保険には加入しなくてもよいとこととされております。
しかしながら、2025年6月13日に年金制度改正法が成立し、社会保険のさらなる適用拡大が決定となりました。
今後は加入要件がより単純化し「所定内賃金が月額8.8万円以上」であることと「被保険者数が51人以上の企業」であることの要件が廃止されます。
- 「週の所定労働時間が20時間以上」であること「学生ではない」要件は、引き続き継続されます。
- 被保険者数が51名以上の事業所(10年かけて段階的に廃止)
- 週の所定労働時間が20時間以上(継続)
- 所定内賃金が月額8.8万円以上(全国の最低賃金の引上げの状況を見極めて3年以内に廃止)
- 2カ月を超える雇用の見込みがある(継続)
- 学生ではない(継続)
なお、これらの変更点はすぐに改正されるものではなく、徐々に廃止へと改正される方針です。
また、会社勤めの方による副業も増えてきておりますが、その方も例外ではなく副業先で上記の要件に該当すれば、それぞれの会社で社会保険の加入が必要となります。
2カ月を超える雇用の見込みがない場合
扶養に入られている方で家計の足しに働きに出ている方など、様々な事情があって社会保険に加入したくない方もいらっしゃることでしょう。
特に、社会保険への加入を避けたい方の多くは、スポットや短期バイトを選択されている方が多いのではないでしょうか。
また、事業主側も折半分の社会保険料を負担しなければならないことから、極力加入させたくないと考え、有期契約の場合最初は2カ月未満の雇用契約を締結するケースが多いようです。
たしかに、2カ月未満の有期雇用契約を締結しており更新しないという定めをしている場合には、社会保険に加入する必要はありません。
ただし、更新しない定めをしているにもかかわらず雇用を継続している場合や、社会保険に加入させないため、あえて数日おいてから継続させている場合などは、年金機構から調査が入り、遡って加入となる可能性がありますのでやめましょう。
2カ月未満で雇用契約を締結している労働者を、引き続き雇用することとなった場合
当初2カ月だけの雇用契約で終わる予定だった方が、業務の繁忙時期により引き続き雇用となった場合は、2カ月を超えると分かった段階で、すぐに社会保険に加入させなければなりません。
その際、雇用契約書の更新条項について注意しましょう。
更新条項が「更新しない」と定めている場合は、2カ月を超えた時点から社会保険の加入となりますが、「更新する」または「更新する可能性がある」と定めている場合は、2カ月を超えた時点から加入するではなく、最初に雇用した時点から遡って加入となります。
社会保険1ヶ月だけ加入することになった場合
有期雇用者の社会保険加入の際、特に月の途中で退職する場合には気を付けましょう。
先述したとおり、2カ月を超えた時点ですぐに社会保険には加入させなければなりませんが、有期雇用の場合は社会保険に加入してもすぐに雇用期間が終了してしまう可能性もあります。
例えば当初1/1~2/28まで、更新条項を「更新しない」定めで雇用契約を締結していた方がいるとします。
急遽、業務繁忙により3/1以降も更新となった場合は、通常3/1から社会保険に加入させます。
更新した雇用契約書の満了日が3/31であれば問題ないのですが、3/15までの場合はどうでしょうか。
社会保険料は1日~末日までの1か月ごとで控除しますので、3/1~3/15の分の社会保険料は日割として控除できません。
この場合、原則の方法としては1か月分の厚生年金保険料をいったん控除します。
後日、転職先で厚生年金に加入した、もしくは国民年金の切り替えが正しくされたことが年金事務所で確認され次第、還付通知書が会社に届きます。
還付通知書に基づき請求すると、事業主分の厚生年金保険料も戻ってきます。
健康保険料についても原則としては1か月分控除しますが、年金のように還付通知書は届きませんのでご注意ください。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
人手不足によりスポットワークや副業も増えている昨今、社会保険の加入が必要かどうかの判断が難しい事業主様もいらっしゃるかもしれません。
もし何か気になる点やご不安なことがございましたら、ぜひベスト・パートナーズまでご用命ください。