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フリーランス新法(厚生労働省管轄)について(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)

フリーランス新法は、フリーランスと取引するすべての事業者が守らなければならない法律です。

多種多様な業界で活躍シテイルフリーランスとの業務委託取引について①「取引の適正化」②「就業環境の整備」の2つの観点から、発注事業者が守るべき義務と禁止行為を定めています。この②「就業環境の整備」の部分が厚生労働省管轄となります。
では、就業環境の整備とはどのような対応をする必要があるのでしょうか。

義務と禁止行為(第3条~第5条、第12条~第14条、第16条)

上の赤枠部分が就業環境の整備が必要な部分となります。フリーランスであっても、ハラスメントに対する体制整備や、育児介護等の両立など労働者と同じように就業環境を整備する必要があります。

募集情報の的確表示義務(第12条)

発注事業者は、広告等によりフリーランスを募集する際はその情報について虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保つ必要があります。

●発注事業者の義務●

<虚偽表示の禁止>

意図して募集情報を実際の就業に関する条件とは異なる表示とした場合や、実際には存在
しない業務に関する募集情報を提供した場合などには、「虚偽の表示」に該当します。

法令違反となる例
  • 実際に業務委託を行う事業者と別の事業者名で募集情報を掲載する。
  • 実際の報酬額よりも高額の報酬額の募集情報を表示する。
法令違反とならない例
  • 応募後、当事者間の合意に基づき、募集情報の条件から実際の契約条件を変更する。

 

<誤解を生じさせる表示の禁止>

一般的・客観的に誤解を生じさせるような表示は、「誤解を生じさせる表示」に該当します。
例えば、以下のような点に留意してください。

留意点
  • 報酬額等について、実際の報酬額等よりも高額であるかのように表示しない。
  • 職種または業種について、実際の業務内容と著しく乖離する名称を用いない。
  • フリーランスの募集と、労働者の募集が混同されるような表示をしない。

 

<正確かつ最新の表示義務>

以下の措置を講じるなど、募集情報を正確・最新の内容に保たなければなりません

主な措置の例
  • 募集を終了・内容を変更したら、速やかに募集情報の提供を終了・内容を変更する。
  • いつの時点の募集情報かを明らかにする

他の事業者に募集を委託した場合には、情報の訂正・募集の終了・内容の変更を反映するよう速やかに依頼する必要があります。

●的確表示義務の対象となる募集情報の事項●

発注事業者は、フリーランスの募集内容のうち下記の①~⑤について表示する場合には、次の二つの点に注意して募集事項を表示することが必要です。

  • 虚偽の表示、誤解を生じさせる表示となっていないこと
  • 正確かつ最新の内容となっていること

<募集情報の事項(具体的な内容例)>

① 業務内容

  • 成果物または役務提供の内容
  • 業務に必要な能力または資格
  • 検収基準
  • 不良品の取扱いに関する定め
  • 成果物の知的財産権の許諾・譲渡の範囲
  • 違約金に関する定め など

② 業務に従事する場所・期間・時間に関する事項

  • 業務を遂行する場所、納期、期間、時間 など

③ 報酬に関する事

  • 報酬の額(算定方法を含む)
  • 支払期日
  • 支払方法
  • 交通費や材料費等の諸経費(報酬から控除されるものも含む)
  • 成果物の知的財産権の譲渡・許諾の対価 など

④ 契約の解除・不更新に関する事項

  • 契約の解除事由
  • 中途解除の際の費用・違約金に関する定め など

⑤ フリーランスの募集を行う者に関する事項

  • フリーランスの募集を行う者の名称・業績 など

育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(第13条)

発注事業者は、フリーランスから申し出があった場合、その妊娠、出産、育児または介護と両立して業務に従事できるよう必要な配慮をしなければなりません。

※6か月未満の期間で行う業務委託については育児および介護等について配慮が必要となります。

●発注事業者の義務●

発注事業者は、フリーランスからの申出があった場合、次の1~3の配慮を行わなければなりません。

① 申出内容等の把握

フリーランスから申出があった場合には、その内容を十分に把握することが必要です。
※ 申出の内容を共有する者の範囲は必要最低限にするなど、プライバシーの保護に留意しましょう。

法令違反となる例 申出があったにも関わらず、フリーランスの申出内容を無視する。

② 取り得る選択肢の検討

フリーランスの希望する配慮や、取り得る対応を十分に検討することが必要です。

法令違反となる例 フリーランスから申出のあった配慮について実施可能か検討しない

③ 配慮の内容の伝達・実施/配慮不実施の伝達・理由の説明

配慮の内容や選択肢について十分に検討した結果、

  1. 業務の性質・実施体制等を踏まえると難しい場合
  2. 配慮を行うと業務のほとんどができない等契約目的の達成が困難な場合

など、やむを得ず必要な配慮を行うことができない場合には、不実施の旨を伝達し、その理由について、必要に応じ、書面の交付・電子メールの送付等により分かりやすく説明することが必要です。

法令違反となる例 配慮不実施としたにもかかわらず、その理由を説明しない

ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)

ハラスメントによりフリーランスの就業環境を害することのないよう相談対応のための体制整備その他必要な措置を講じる必要がございます。

また、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由として不利益な取り扱いをしてはなりません。

具体的には、

  1. 方針の明確化とその周知・啓発
  2. 相談・苦情に応じて適切に対応するための体制整備
  3. 相談への迅速・適切な対応
  4. プライバシー保護・不利益変更取扱い禁止

等の措置となります。

●発注事業者が講ずべき措置●

① ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発

  • 発注事業者の方針等の明確化と社内(業務委託に係る契約担当者等)へ周知・啓発すること。
  • ハラスメント行為者に対しては厳正に対処する旨の方針を就業規則などに規定すること。
  1. 社内報、社内ホームページなどに方針を記載して配布する。研修、講習などを実施する。
  2. 就業規則などで、ハラスメントを行った者に対する懲戒規定を定め、労働者に周知・啓発する。

② 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応する目に必要な体制の整備

  • 相談窓口を設置し、フリーランスへ周知すること。
  • 相談窓口担当者が相談に適切に対応できるようにすること。
  1. 外部機関への相談対応の委託、相談対応の担当者や相談対応制度の設置をする。業務委託に係る契約書やメール、 フリーランスが定期的に閲覧するイントラネットなどに相談窓口の案内を記載する
  2. 相談窓口担当者向けのマニュアルを作成し、マニュアルに基づき対応する。

③ 業務委託におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

  • 事案についての事実関係を迅速かつ正確に把握すること。
  • 事実関係の確認ができた場合、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に実施すること。
  • 事実関係の確認ができた場合、行為者に対する措置を適正に実施すること。
  • ハラスメントに関する方針の再周知・啓発などの再発防止に向けた措置を実施すること。
  1. 相談者と行為者の双方から事実関係を確認する。必要に応じて、第三者からも事実関係を聴取する
  2. 事案の内容などに応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助や被害者の取引条件上の不利益の回復などを行う。
  3. 業務委託におけるハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずる。
  4. 従業員に対して業務委託におけるハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施する

④ 併せて講ずるべき措置

  • 上記①~③の対応に当たり、相談者・行為者などのプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、従業員およびフリーランスに対して周知すること
  • フリーランスが相談をしたこと、事実関係の確認などに協力したこと、労働局などに対して申出をし、適当な措置を求めたことを理由に契約の解除などの不利益な取扱いをされない旨を定め、フリーランスに周知・啓発すること。

中途解除等の事前予告・理由開示義務(第16条)

発注事業者は、6か月以上の期間で行う業務委託について、契約の解除または不更新をしようとする場合、例外事由(*1)に該当する場合を除いて解除日または契約満了日から30日前までにその旨を予告する必要があります。

予告がされた日から契約が満了するまでの間に、フリーランスが解除の理由を発注事業者に請求した場合、発注事業者は、例外事由に該当する場合を除いて、遅滞なく開示する必要があります。

●事前予告義務の対象となる業務委託● ※条件1、条件2に該当する場合は30日前までに予告が必要!!

<条件1> 6か月以上の期間で行う業務委託に該当すること
① 6か月以上の業務委託だけでなく、②契約の更新により6か月以上継続して行うこととなる業務委託を指します。
※基本契約を締結している場合には、個別契約ではなく基本契約をもとに期間を判断します。
※基本契約が締結されている場合には、業務委託契約の一部をなしているものとして、基本契約に基づく個別契約だけでなく基本契約についても予告義務の対象となります。

<条件2> 契約の解除または不更新に該当すること
① 「契約の解除」とは、発注事業者からの一方的な契約の解除のことを指します。
※フリーランスからの解除は含みません。また、発注事業者とフリーランスの間の合意に基づく解除の場合も「契約の解除」に該当しません。(但し、フリーランスの自由な意思に基づくものであることが必要)
※発注事業者とフリーランスの間で、「一定の事由がある場合に事前予告なく解除できる」と定めていた場合も、例外事由に該当しない限り、直ちに事前予告が不要とはなりませんので留意が必要です。
② 「契約の不更新」とは、発注事業者が不更新をしようとする意思を持って、契約満了日から起算して1か月以内に次の契約を締結しない場合を指します。該当する例、該当しない例は以下のとおりです。

該当する例  

  • 切れ目なく契約の更新がなされているまたはなされることが想定される場合であって、当該契約を更新しない場合
  • 断続的な業務委託契約であって、発注事業者がフリーランスとの取引を停止するなど次の契約申込みを行わない場合
該当しない例
  • 業務委託契約の性質上一回限りであることが明らかである場合
  • 断続的な業務委託契約であって、発注事業者が次の契約申込みを行うことができるかが明らかではない場合

<例外>事前予告の例外事由に該当する場合には予告が不要

  1. 災害などのやむを得ない事由により予告が困難な場合
  2. フリーランスに再委託している場合で、上流の事業者の契約解除などにより直ちに解除せざるを得ない場合
  3. 業務委託の期間が30日以下など短期間である場合
  4. フリーランスの責めに帰すべき事由がある場合
  5. 基本契約がある場合で、フリーランスの事情で相当な期間、個別契約が締結されていない場合

まとめ

いかがでしたでしょうか。
簡単にまとめますと、

  1.  求人募集と同様に、フリーランスを募集する場合も、正確かつ最新の内容を表示する必要がある。(表示事項:業務内容、場所/期間/時間等、報酬、契約解除事由、募集を行う者に関する事項)
  2.  妊娠、出産、育児、介護など業務の両立に対する申し出がある場合は、配慮する必要がある。(やむを得ず必要な配慮を行うことができない場合には、理由について説明する必要がある)
  3.  労働者同様にハラスメントで就業環境を害することのないよう、相談体制や必要な措置を整える必要がある。(方針の明確化/周知/啓発、相談窓口、適切な対応、など)
  4.  一方的に契約を解除する場合は、30日以上前の予告が必要である。
  5. の対応が必要となります。

これからフリーランスに業務依頼を考えておられる事業所も、すでに業務委託をされている事業所も必要な配慮や措置をしなければ法違反となる可能性もありますので、一度社内の体制を見直しくださいませ。

「どこから手をつけていいかわからない」「必要な対応はわかったけど、具体的にどうしたらいいかわからない」など困りごとがございましたら、お気軽に社会保険労務士法人ベスト・パートナーズのご相談くださいませ。

いつでもご連絡お待ちしております。

 

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