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【中小企業必読!】知らなかったでは済まされない 同一労働同一賃金とその対応について

2021年4月より、中小企業を含むすべての企業において『同一労働同一賃金』が全面施行となり、

いわゆる正規労働者と非正規労働者の賃金等の不合理な待遇差が全ての企業において禁止となりました。

 

しかし、世の中を見渡すと特に中小企業ではまだまだ同一労働同一賃金にきちんと対応をしていないのが現状です。

マイナビが実施した『非正規雇用の給与・待遇に関する企業調査(2022年)』の結果を見ると、「基本給」について同一労働同一賃金への対応を済ませたという企業割合は、大企業(正社員300人以上)が『50.8%』だったのに対し、中小企業(同300人未満)は『37.0%』にとどまっており、中小企業の対応の遅れが如実に表れています。

 

これを解消するためか、これまで「同一労働同一賃金」の順守対応には各都道府県の『労働局 雇用環境・均等部等』のみがあたっていましたが、今年からは全国の『労働基準監督署』もその対応にあたることとなりました。

本来、労働基準監督署は「労働基準法」や「労働安全衛生法」、「労災保険法」を中心に担当している役所です。

その労働基準監督署が言うなれば管轄違いとも言える「同一労働同一賃金」にも関わるようになったということは、それほどに政府が「同一労働同一賃金」の浸透に本気になっているということです。

 

いよいよ中小企業においても同一労働同一賃金についてきちんとした対応が迫られてきている状況となってきました。

そこで今回はそもそも同一労働同一賃金とは何か、どのようなものでどのような対応をしなければならないのか初歩的な内容を改めてご説明していこうと思います。

 

そもそも同一労働同一賃金とは?

 

同一労働同一賃金とは、一言でいえば『正規労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の賃金等の『不合理』な待遇差を禁止するもの。』となります。

裏を返せば不合理な待遇がある状態は『違法』となってしまうということです。

 

ここで注意したいこととして『同一労働同一賃金』という言葉だけで「同じ仕事をしている以上は同じ賃金でなければならない制度だ!」と認識してしまっている人が少なからずいますが、これは大きな間違いです。

この同一労働同一賃金において不合理な待遇差を禁止しているものはあくまでも『正規労働者と非正規労働者』の間にある待遇格差のみとなり、正規労働者同士や非正規労働者同士の間にある待遇差については対象となっていません。

 

よって、契約社員やパート・アルバイト等の『非正規労働者』を雇用しておらず、正規労働者(正社員)だけを雇用している企業で、今後もその状態が続く場合は同一労働同一賃金への対応は特段必要ないものとなります。

 

不合理な待遇とは?『均等待遇』と『均衡待遇』について

前章でご説明しましたとおり、正規労働者と非正規労働者の間にある待遇の格差が『不合理か否か』が同一労働同一賃金の大きな要点となります。

ではどのような格差だと『不合理(法律違反)』となるのでしょうか?

その指標となるものとして『均等待遇』と『均衡待遇』というものがあります。

 

『均等待遇』とは一定の要件を満たした場合には、正規労働者と非正規労働者の労働条件を同じにしなければならず、格差があればそれだけで即違法となるという法規制です。

ただし、その要件は非常に厳しいものとなっており①正規労働者と非正規労働者の職務の内容が同じでかつ、②人材活用の仕組み(配置転換の有無・範囲、昇進や評価の仕組み等)が採用から退職まで全期間において同じという2要件を満たした場合のみに限られてます。

正規労働者と非正規労働者の職務の内容が同じだという場合は多いとは思いますが、配置転換の有無・範囲、昇進や評価の仕組み等までもが、採用から退職までのすべての期間で全く同じであるという企業は少ないものでしょう。

ですので、実際にこの『均等待遇』が問題となる場面はそれほど多くはないものかと思います。

 

問題となってくるのは『均衡待遇』です。

均衡待遇とは、正規労働者と非正規労働者の労働条件に格差があること自体は問題ないが、その格差が不合理なものであれば違法となるという法規制です。

不合理か否かは下記の3要素をみて総合的に判断されます。

  1. 職務の内容が同じなのか異なるのか、異なるのであればどの程度異なるのか。
  2. 人材活用の仕組み(配置転換の有無・範囲、昇進や評価の仕組み等)が同じなのか異なるのか、異なるのであればどの程度異なるのか。
  3. その他の事情

問題なのは『③その他の事情』という要素があるために、どのような場合に不合理と判断されるかが不透明であり、紛争等も発生しやすく注意が必要です。

 

『均等待遇』『均衡待遇』いずれにしても

  1. 職務の内容が同じか否か?
  2. 人材活用の仕組みが同じか否か?

については違法性を左右する重要な要素となりますので、これが明確に異なっていましたら均等待遇となることはなく、また均衡待遇違反となるリスクも下げることができます。

 

以上が同一労働同一賃金の基本的内容となります。

次に、では実際にどのように進めていけば同一労働同一賃金への対応ができるのか?

実務上の対応について次章から『正規労働者と非正規労働者(有期雇用労働者、パート・アルバイト労働者)の場合』と『正規労働者と非正規労働者(派遣社員)の場合』の2パターンに分けておおよその流れをご説明していきます。

 

実務上の対応

正規労働者と非正規労働者(有期雇用労働者、パート・アルバイト労働者)の場合

1,労働者全員の雇用形態とその待遇を確認する

まずは、誰がどのような仕事をどこまでの権限で行なっているのか労働条件の『棚卸し』をすることから始まります。

非正規労働者が複数いる場合はその人数や待遇をそれぞれ明確にする必要がありますが、有期雇用労働者が無期転換して無期のフルタイム労働者となったら、取り組みの対象者から外れます。

労働条件の確認項目については厚労省が出している『同一労働同一賃金ガイドライン』が参考となります。

しかし、ガイドラインを利用する際には、例えば手当においては手当の趣旨を手当の名称から形式的に判断するのではなく、どのような議論を経てどのような趣旨のもと当該手当を支給するようになったのか等の事情をきちんと精査することが大切です。

 

2,待遇に差がある場合はその理由を明確にする

上記『1』にて洗い出した各項目の待遇について同じ職務についている正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に格差がないかをその格差は合理的かを確認して行きます。

待遇差の合理性を判断するためには『正社員にその待遇を与える目的』『その待遇が与えられるための要件』『正社員と非正規社員の業務内容、責任などの違い』といった内容を着眼点として確認していくといいでしょう。

そして、格差がある場合はその『理由』を明確にする必要があります。当然ながら雇用形態を理由とした格差は認められません。

役割や役職などによる不合理とはならない格差であること、そして格差を合理的に説明ができるものであることが重要となります。

つまりは「この格差があるのはなぜか?」と問われた時に筋の通った説明がきちんとできるようにしておかなければならないということです。

 

3,不合理な格差が認められた場合は、改善に向けて動く

改善する方法としては非正規労働者の待遇を引き上げるか、正規労働者の待遇を引き下げることとなりますので、経営者の判断だけではなく、労働者の意見や現場の状況を見て判断をすることが必要となります。

 

正規労働者と非正規労働者(派遣社員)の場合

派遣社員は、派遣元の企業と雇用契約を結び、派遣先にはあくまで『労働の提供』を行っている状態です。

同一労働同一賃金の原則はこれまでご説明してきたように、同じ会社の中で仕事の勤務内容や責任の範囲・負担などが全く同じであれば、雇用形態が違っても同じ賃金や待遇としなければならない、ということになりますが、派遣社員の場合は労働の提供を行っている『派遣先』の企業で同じ仕事をしている正社員と同じ待遇にしなければならない、と定められています。

 

しかし他の雇用形態と比べ派遣社員の労働条件は派遣先の会社も関係してくることからかなり複雑なものとなり、そのため今までご説明してきたやり方では不合理な待遇差を改善できない場合もあります。

そこで派遣社員の待遇は『派遣先均等・均衡方式』と『労使協定方式』のどちらかの方法で決定する仕組みがとられており、これにより同一労働同一賃金を実現することとなります。

1,派遣先均等・均衡方式

こちらは、派遣社員の就業先の正規労働者と同等の待遇にする方式です。

この方式は前章の『④正規労働者と非正規労働者(有期雇用労働者、パート・アルバイト労働者)の場合』と同様に派遣先の正規労働者と派遣社員の間で待遇の格差等を調査しそれを改善させていく流れとなります。

当然に派遣先企業が変われば待遇も変わりこととなりますので派遣元企業は派遣先が変わる都度、派遣先から正規労働者の待遇に関する情報の提供を受け、その情報を踏まえて派遣労働者の待遇を決定することになります。

2,労使協定方式

こちらは、あらかじめ派遣社員を雇用している派遣元企業にて派遣社員の賃金額を定め、その金額について労使間で『協定』を締結し待遇を決めるという方式です。

なお派遣社員の賃金は厚生労働省が毎年出す賃金統計データを基準にし、平均的な賃金と同等以上となるように定めなければならず、賃金については下記①と②の両方をクリアしていないと認められないものとなっています。

  1. 派遣労働者と同様の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額として省令で定める額以上であること。
  2. 派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験等の向上があった場合に賃金が改善されるものであること。

※通勤手当その他省令で定めるものについては『①』のみとなっています。

 

また派遣社員の賃金以外の待遇については、派遣元で雇用される正規労働者との間に不合理な待遇差がないようにしなければなりません。

そしてこの方式は『同種の業務内容』であれば派遣先企業が変わっても待遇は変わらないものとみなされるので、上記『1,派遣先均等・均衡方式』のように派遣先が変わる都度、対応を強いられるということはありません。

ただし、教育訓練や福利厚生施設等については労使協定の適用の対象とはなっておらず、派遣先均等・均衡方式と同様に派遣先から正規労働者の待遇に関する情報の提供を受け、派遣労働者の待遇を決定することになりますのでこの点は注意が必要です。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

以上が同一労働同一賃金の内容と実務上の対応についての概要となります。

 

冒頭でもお話ししましたように、国はこれからもどんどん同一労働同一賃金を推し進めていくことが予想され、中小企業においてはいよいよこれから本格的に対応を迫られる時期となってきます。

まずは各従業員の労働条件の棚卸しから行ってみてはいかがでしょうか?

 

実際にやってみると確認項目は膨大でどのように対応すればいいのか判断に困る場面が多々発生するものと思います。

そんな時は、お気軽に社会保険労務士法人ベスト・パートナーズにお声がけいただければ幸いです!

 

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