労働保険の年度更新とは?留意点も解説!

労働保険の年度更新と聞いてすぐに思い浮かばないことかと思います。

今回は、その年度更新について解説していきます。

年度更新とは簡単に言いますと毎年1回おこなう労働保険料(労災保険と雇用保険)の申告及び納付の手続きのことです。

前年度の確定保険料と新年度の概算保険料を労災保険と雇用保険それぞれの被保険者の賃金総額などをもとに計算し、申告書を作成し毎年6月1日から7月10日までの間に申告、保険料の納付を行います。

1.  労働保険の年度更新とは

労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(これを「保険年度」といいます。)を単位として計算されることになっております。

その額はすべての労働者(雇用保険については、被保険者)に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を乗じて算定することになります。

労働保険では、保険年度ごとに概算で保険料を納付(徴収法第15条)し、保険年度末に賃金総額が確定したあとに精算(徴収法第19条)します。

したがって、事業主は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きが必要となります。これが「年度更新」の手続きです。

この年度更新の手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間に行わなければなりません。

 

2. 労働保険の年度更新の流れ

毎年5月の下旬頃に、管轄の都道府県労働局から申告関係書類(緑色の封書)が送付されます。

以下の申告関係書類が同封されているため、届いたら中身を確認します。

「参考」令和6年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方

mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/hoken/kakikata/dl/keizoku-all.pdf

賃金集計表を作成する

まずは、確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表(以下、賃金集計表)を作成します。

この賃金集計表は提出する必要はありませんが、年度更新の関連書類として残しておくことを推奨します。

 

そして、確定保険料を計算する際は前年4月〜今年3月の賃金台帳等を参考に、前年4月〜今年3月の労働について支払った賃金総額に保険料率をかけて算出します。

賃金総額の集計をする際は、労働保険における賃金に含めるものと含めないものを区分し、「賃金に含めるもの」のみを対象としてください。

下記一例を挙げますのであらかじめご確認ください。

 

賃金に含めるもの 賃金に含めないもの
基本賃金(時間給・日給・月給) 役員報酬
賞与 慶弔見舞金
通勤手当(定期券・回数券等) 勤続奨励金
家族手当(子供手当・扶養手当) 出張旅費(宿泊手当・赴任手当)
資格手当(技能手当・特殊作業手当) 工具手当
住宅手当 休業補償費
地域手当 傷病手当金
奨励手当(皆勤手当・精勤手当) 解雇予告手当
休業手当 生命保険掛金(会社が全額負担のもの)
在宅勤務手当 持家奨励金
調整手当 住宅の貸与を受ける利益
臨時手当 その他(実費弁償にあたるもの)
宿直・日直手当
その他(規則、協約、協定等にあらかじめあらかじめ支給条件が明確にされたもの)

 

なお、賃金集計表の作成の際は下記厚生労働省Webサイトで公開されている「年度更新申告書計算支援ツール」をぜひご活用ください。

「参考」主要様式ダウンロードコーナー(労働保険適用・徴収関係主要様式)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

労働保険概算・確定保険料申告書を作成する

賃金集計表で集計した賃金総額を基に申告書を作成していきます。

労災保険料率については下記厚生労働省Webサイトで公表されている「労災保険率表」にて確認できます。

雇用保険料率は、事業主と労働者がそれぞれに定められた割合を負担します。

事業の種類ごとに異なるため、該当する保険料を確認しておきます。

雇用保険料率についても、厚生労働省のWebサイトにて最新の割合が確認できます。

概算保険料額の記入については、翌年度中に支払われることが予定される賃金総額の見込み額をもとに保険料率によって計算します。

その際に労働保険・雇用保険分の賃金総額の見込み額が前年度と比較して2分の1以上2倍以下の場合は前年度の確定賃金総額と同額を新年度概算賃金総額の見込み額とします。

「参考」令和6年度の労災保険率について(令和6年度から変更されます)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

「参考」雇用保険料率について |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

3. 保険料申告・納付

<提出先>

金融機関(銀行・郵便局・信用金庫)・・・申告書提出と保険料納付が両方可能。

申告書提出のみは×(口座振替の場合は×)

都道府県労働局や労働基準監督署・・・申告書提出と保険料納付が両方可能。

申告書提出のみも〇

社会保険・労働保険徴収事務センター・・・申告書提出のみ可能

 

<保険料・一般拠出金の納付>

下記の納付期限までに領収済通知書(納付書)を金融機関へ提出し保険料を納付します。

概算保険料額が40万円(労災保険か雇用保険のどちらか一方の保険関係のみ成立している場合は20万円)以上の場合又は労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合は

延納(全3期にわけて)納付することも可能です。

 

全期(第1期) 第2期 第3期
納付期限 7月10日 10月31日 1月31日
口座振替納付期限 9月6日 11月14日 2月14日

※令和6年度

 

また、手続きが遅れますと政府が保険料・拠出金の額を決定し、さらに追徴金(納付すべき保険料・拠出金の10%)を課すことがありますので納期限は十分に注意しましょう。

 

4. 労働保険の年度更新の留意点

  • 事業所が複数あるケース

労働保険は会社単位ではなく事業所単位で加入する必要があります。

そのため、支店や店舗等、複数の事業所を有する会社はそれぞれの事業所ごとに年度更新を行う必要があります。

しかし、同一の事業主かつ労災保険料率で定める事業の種類が同じ事業所の場合は、要件を満たすことでまとめて手続きすることが可能です。

これを『継続事業の一括』と呼びます。

一括で申告する際は、事前に継続事業の一括申請の手続きが必要です。

あらかじめ要件を確認したうえで届出を行いましょう。

 

  • 年度途中で各種変更や廃止があるケース

年度の途中で名称や所在地などを変更したり事業を廃止したりする場合は、原則10日以内での変更届の提出が必要です。

管轄外への住所変更をする場合は、管轄の変更と同時に労働保険番号も変わるため、年度更新時は最新の情報を記載します。

事業を廃止した場合は、廃止した日までに支払った賃金総額を基に確定保険料を計算して50日以内に確定保険料を申告・納付します。

 

5.最後に

以上、年度更新とは~申告・納付までについて解説してきました。

より詳しい内容については「令和6年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方|厚生労働省 (mhlw.go.jp)」に記載がございますので、取り組む際には是非ご参照頂ければと思います。

 

執筆者:田頭佳寿美

労務を全力でサポートします!

「労務相談や規則の作成についてどこのだれに相談すればよいのかわからない」
「実績のある事務所にお願いしたい 」
「会社の立場になって親身に相談にのってほしい」
といったお悩みのある方は、まずは一度ご相談ください。

実績2000件以上、企業の立場に立って懇切丁寧にご相談をお受けします!